研究実績の概要 |
本研究は、全身性強皮症における異所性の石灰沈着症の機序解明を目的としている。今年度は、臨床現場で全身性強皮症の石灰沈着症に対する治療薬として使用されているジルチアゼム、プロベネシド、ミノサイクリン、コルヒチンの4つを用意し、間葉系幹細胞からの骨芽細胞誘導の培養系に複数の濃度を振って、石灰誘導の阻害効果を検討した。予め細胞毒性試験でviabilityを確認した上で添加濃度を検討し、前3剤は0, 1, 5 ug/mLで、コルヒチンのみ0, 0.2, 1 ng/mLとした。評価項目の一つは石灰誘導の有無は半定量的にアリザリンレッドS染色の吸光度測定とした。もう一つは、骨芽細胞のカスケードの上流であるRUNX2、およびその下流であるALP、BGLAP(osteocalcin)、type I collagen、SPP1(osteopontin)の合計5種類の遺伝子発現の量を定量的PCRで評価し、GAPDHとの比で算出した。その結果、ミノサイクリンでは、BGLAPを除いて濃度依存的な阻害効果が見られた。ジルチアゼム、プロベネシドは明らかな阻害効果は見られず、コルヒチンは細胞のviabilityがやはり低く、さらなる条件検討を要した。 また、今回は石灰沈着症を有する患者から石灰沈着が付着している組織の切除検体を1件採取した。検体摘出時、組織の断面からスタンプ標本を作製したところ、アリザリンレッドSで染色され、リン酸カルシウム成分であることを確認した。また、パラフィン標本を作製し、HE染色したところ、ヘマトキシリン陽性の結晶の近傍に、小型の単核球が集簇していることを確認した。また、この組織は摘出後直ちに培養し、石灰化を自発的に産生する細胞群の増殖をさせ、一部は培養を残し、残りの大部分は保存している。
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