研究課題
アトピー性皮膚炎は, 2型炎症を背景として発症する掻痒を伴う慢性の皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎において,様々な2型炎症メディエーターがC線維に作用して痒みを惹起することが, 近年明らかになってきたが,痒みは高度な神経生理学的反応であるため,その発症機序の解明が困難であった。本研究では、2型炎症主体のアトピー性皮膚炎症状と強い掻痒を顔面に発症するFADSマウスを用いることにより,アトピー性皮膚炎における新規の痒みの機序の解明を目的とする。本年度は,マトリセルラータンパク質であるペリオスチンを欠損したFADSマウスを作成し、その解析を実施した。ペリオスチン欠損FADSマウスではかゆみに対する掻破行動が著明に減弱した。またペリオスチンの中和抗体により、かゆみが抑制されることを見出し、さらにペリオスチンの受容体であるaVb3インテグリンの協力な阻害剤であるCP4715の投与により、かゆみが速やかに抑制されることを見出した。これによりペリオスチンが受容体であるaVb3インテグリンに結合し、痒みを惹起することを明らかにした。これらの成果はペリオスチン・aVb3インテグリン経路が痒みの新たな治療標的であることを示すものである。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究により、新たな痒みの分子機序を明らかにしただけではなく、aVb3インテグリン阻害剤であるCP4715についての用途特許の出願にまで至ったため。
今後は、CP4715以外のVb3インテグリン阻害剤の作用を解析し、特許の強化を図るとともに知覚神経細胞を用いてペリオスチン・aVb3インテグリン経路を介した知覚神経細胞の活性化機序を明確にしていく。
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Cell Rep
巻: 42 ページ: 111933
10.1016/j.celrep.2022.111933