研究課題/領域番号 |
22K08570
|
研究機関 | 日本薬科大学 |
研究代表者 |
岡田 直子 日本薬科大学, 薬学部, 講師 (50636165)
|
研究分担者 |
出原 賢治 佐賀大学, 医学部, 教授 (00270463)
吉川 衛 東邦大学, 医学部, 教授 (50277092)
井上 裕子 日本薬科大学, 薬学部, 教授 (50367306)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | エピジェネティクス / アレルギー / 線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、アレルギー疾患の難治化における線維芽細胞のエピジェネティクス機構を解明し、エピゲノム制御に着目した新たな難治化メカニズムの究明を目的とする。本年度は、重症アレルギー性眼疾患線維芽細胞におけるペリオスチン遺伝子の高発現の原因となるエピゲノム制御機構を解明するために、まずペリオスチン遺伝子のプロモーター領域におけるヒストン化学修飾状態の変化をクロマチン免疫沈降法(ChIP)により検証した。その結果、重症アレルギー性眼疾患線維芽細胞では、転写調節を抑制的に制御するH3K9me3の化学修飾が正常ドナー由来結膜線維芽細胞に比べて有意に低下していることが明らかとなった。また、他の化学修飾変化についても検討したところ、H3K4me3、H3K27me3、H3K9acにおいては変動がないこともわかった。つまり、プロモーター領域のH3K9me3の低下が、重症アレルギー性眼疾患線維芽細胞におけるペリオスチン高発現の重要な因子であることを見出した。そこで、次にH3K9me3の脱メチル化あるいはメチル化に関与するヒストン修飾酵素群に着目し、重症アレルギー性眼疾患線維芽細胞における発現変動の検証をqPCRおよびウエスタンブロット法を用いて進めており、次年度も継続して実施する予定である。また、重症アレルギー性眼疾患線維芽細胞におけるペリオスチン高発現に対する薬剤応答性についても検証した。その結果、治療薬としても用いられているタクロリムス(FK506)や抗IL-4Rα抗体は、ペリオスチン高発現を抑制できないことがわかった。一方で、ステロイド(Dexamethasone)に対しては応答性が確認された。以上より、重症アレルギー性眼疾患線維芽細胞におけるペリオスチン遺伝子の発現調節の一端が明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重症アレルギー性眼疾患線維芽細胞におけるペリオスチン遺伝子のプロモーター領域におけるヒストン化学修飾状態の変化については、解析が順調に進み、H3K9me3の低下が重症アレルギー性眼疾患線維芽細胞におけるペリオスチン高発現と関連することを明らかにした。また、薬剤感受性についても解析が進んでおり、重症アレルギー性眼疾患の既存治療薬であるタクロリムスでは、ペリオスチン高発現を完全に制御することは難しいことも明らかにした。現在は、重症アレルギー性眼疾患線維芽細胞におけるペリオスチン遺伝子の発現調節機構の解明のために、H3K9me3の化学修飾を変動させるヒストンメチル化酵素、脱メチル化酵素の同定に着手し、順調に検討を行っている。さらに、次年度に計画している機能解析の予備検討や、アレルギー性の鼻疾患由来線維芽細胞の収集手続きも並行して進めており、検討準備を進めているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度に得られた結果を基にして、まずは重症アレルギー性眼疾患線維芽細胞におけるペリオスチン遺伝子の発現調節の解明のために、前年度に引き続きH3K9me3の化学修飾を変動させるヒストンメチル化酵素、脱メチル化酵素の同定を行う。候補となるH3K9me3の脱メチル化酵素として既知のものには、KDM4群、KDM3群、メチル化酵素は、SUV39H群、SETDB群が存在する。これらの絞り込み、同定をqPCRおよびウエスタンブロット法を用いて実施する。次に、同定されたエピゲノム変化に関与する酵素について、siRNA導入系や遺伝子強制発現系、低分子化合物を用いて、重症アレルギー性眼疾患線維芽細胞からのペリオスチン遺伝子あるいはタンパク質発現への影響を、qPCRおよびELISAで検討する。また、重症アレルギー性眼疾患線維芽細胞において、同定されたヒストン修飾酵素を阻害あるいは強制発現した際の細胞機能への影響を調べる。具体的には、①細胞増殖能への影響、②上皮系細胞との共培養系におけるコロニー形成能への影響、③ペリオスチン以外の遺伝子発現への影響の3点について検討を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会参加等による情報収集のための出張旅費を計上していたが、昨今のコロナ渦の影響で学会等に対面参加することができず、旅費等を含めた次年度使用額が発生した。また、試薬を効率的に使用した結果、余剰が生じている。これらは、次年度の消耗品費、実験試薬等費として充当する。
|