研究課題/領域番号 |
22K08574
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
岩田 慈 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60389434)
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研究分担者 |
田中 良哉 産業医科大学, 医学部, 教授 (30248562)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | SLE / NPSLE / モノアミン |
研究実績の概要 |
全身性エリテマトーデス (SLE)は、全身性の自己免疫疾患で、様々な臓器に障害をきたす。なかでも中枢神経に病変をきたした場合、予後に大きく影響する。精神症状を呈する神経精神ループス neuropsychiatric SLE (NPSLE)病態では、ミクログリア、そして特にB細胞の分化異常、サイトカイン、自己抗体の関与が示唆されるが不詳である。本研究では、患者末梢血・髄液を用いた網羅的解析から、①NPSLEの病態に深く関与する生理活性物質の同定、②そのB細胞分化異常、臨床像への関連、③in vitroで生理活性物質がB細胞分化を誘導する機序、を検証することを目的としている。まず、びまん性徴候NPSLEの新たな評価法、サロゲートマーカーの探索を行った。当院に入院した精神神経症状の病歴を有し、頭部MRI所見異常を伴う疾患活動性の高いSLE患者44例に対しPsychiatric symptom rating scales (PSYRATS)を施行、後方視的にその有用性を検証した。主要評価項目はびまん性徴候NPSLEと診断されていないSLE患者におけるPSYRATS陽性率とした。1999年ACR分類基準では、PSYRATSを施行した44例のうち7例のみがびまん性徴候NPSLEと診断されていた。PSYRATS陽性率は、びまん性徴候NPSLEとは診断されていない SLE患者37例のうち13例 (35.1%)に達し、その全例でPSYRATSの中で抑うつ症状の指標であるMADRSが陽性であった。さらに、NPSLEとは診断されていなくても、抑うつ症状を呈してMADRS陽性のSLE患者20例では、髄液中のHVA濃度、SDF-1α、SCGF-1β濃度がMADRS陰性SLE症例と比較し有意に低下しており、HVA、SDF-1α、SCGF-1βは互いに相関した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回、活動性SLEでは潜在性に抑うつ症状を有する症例が多く存在し、MADRSによる精神症状評価はその検出に有用であること、さらに髄液HVA、SDF-1α、SCGF-1βの低下は同病態を反映しており、サロゲートマーカーとなる可能性があることを明らかにした。このように、NPSLE病態に深く関連するモノアミンやサイトカインの抽出、その臨床的意義を検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
B細胞においては、モノアミン以外にも様々な生理活性物質が活性化や分化に関与していることが推察される。今後はNPSLEにおいて重要な役割を果たしているB細胞の分化機構に、各種生理活性物質が与える影響や、免疫代謝機構をin vitroで明らかにしたい。さらに、それらの臨床的意義についても患者検体を用いた実験で明らかにしていきたいと考えている。
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