研究実績の概要 |
本研究は、1)組換え乳酸菌を用いたSARS-CoV-2抗原運搬体や低分子抗体(single-chain variable fragment:scFv)医薬の運搬体を構築し、2)「経気道投与」によるCOVID-19抗体医薬や粘膜ワクチンの開発を目的とする。 2022年度は、1)SARS-CoV-2変異株で保存される抗原情報を含む組換え乳酸菌の作成、ならびに、2)SARS-CoV-2スパイク蛋白認識低分子抗体産生組換え乳酸菌の作成に取り組んだ。1)に関しては、変異株への交差性が期待できる保存配列からのアプローチを考慮したが、ヒト臨床試験で組換え蛋白ワクチン(S-268019-b)のブーストによる変異株に対する優れた交差反応性の報告に至り(Takano T, Sato T, et al. Nature Communications 2023,14,1451)、方針を変更した。2023年度に、S-268019-bの抗原タンパク情報をもとに組換え乳酸菌の作成をすすめる。2)に関しては、COVID-19感染者血清から同定され、感染動物モデルでのSARS-CoV-2中和活性が報告されているCC12.1(Rogers TF, Zhao F, et al. Science 2020,369,956)のアミノ酸配列情報をもとに、CC12.1抗体産生組換え乳酸菌(CC12.1scFv)を作成した。 今回作成したCC12.1scFv産生組換え乳酸菌を用いたin vitroの検討で、スパイク蛋白の受容体結合部位への高い結合活性が示された(Oshima S, Namai F, et al. Molecular Biotechnology 2023 in press)。本結果に基づき、2023年度以降のSARS-CoV-2 in vitro感染モデルでのウイルス中和活性の検討に移行する。
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