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2022 年度 実施状況報告書

細菌毒素の病原性における宿主因子GILTの働きに関する基礎および臨床研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K08581
研究機関長崎大学

研究代表者

高橋 健介  長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40567294)

研究分担者 久保 嘉直  長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (30273527)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードジフテリア / GILT
研究実績の概要

我々は、ウイルス・エンベロープ蛋白質のS-S結合を切断することにより感染を抑制する宿主因子GILTを同定した。ジフテリア菌が発現するジフテリア毒素はS-S結合が切断されることにより細胞内に侵入し、細胞毒性を発揮する。しかし、ジフテリア毒素のS-S結合を切断する因子はまだ同定されていない。我々は、GILTがジフテリア毒素のS-S結合を切断し、ジフテリアの病原性に関与しているのでないかと考えた。予期した通り、野生型HeLa細胞の培養において、ジフテリア毒素の添加は細胞死を誘導したが、GILTノックダウンHeLa細胞では、細胞死が抑制された。この現象が臨床においても確認できるかどうか調べている。デングウイルスは異なった血清型ウイルスによる2回の感染により重症化する。1回目の感染で獲得した抗体が、2回目の感染を促進するからである。よってデングウイルスのワクチンは重症化を促進する。それによりフィリピンではワクチンに対する国民の信頼が低下し、デングウイルスだけでなく様々なワクチン接種が敬遠された。その結果、様々な感染症患者が増加した。ジフテリアもその1つである。しかし、ジフテリア菌に感染しても重症化しないヒト、重症化するヒトがいる。この違いがGILTの発現量やSNPによって起こっているかどうか解析する。フィリピン・サンラザロ病院では毎年10-20名のジフテリア患者が検出される。これら患者のGILT発現量およびSNPと重症度の相関を観察する。サンラザロ病院小児科との共同研究契約を締結し、現在、臨床研究の倫理委員会の承認を申請している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していたように、GILTノックダウン細胞におけるジフテリア毒素による細胞死の誘導が抑制される結果を得た。ジフテリア毒素はマウスに対して毒性を示さないが、コレラ毒素はマウスに病原性を持っている。またコレラ毒素もS-S結合が切断されることにより細胞毒性を発揮することが知られている。そのため、マウスを用いたin vivo研究ではコレラ毒素を使用した。非常に重要な結果として、野生型マウスを100%死亡させる量のコレラ毒素をGILTノックアウトマウスに接種すると、その死亡率は33%に低下した。in vivoにおいてコレラ毒素による病原性に宿主GILTが重要な働きをしていることが実証された。臨床研究を行うためにフィリピン・サンラザロ病院小児科との共同研究契約を締結した。

今後の研究の推進方策

倫理委員会の承認を得て、患者サンプルのGILT発現レベルをreal-time PCRにより定量する。また各患者のGILT SNPを同定し、重症度との相関を統計学的に解析する。また、ジフテリア毒素だけでなく、コレラ毒素もS-S結合が切断されることにより病原性を発揮することが知られている。コレラ毒素の培養細胞およびマウスにおける毒性発揮に対するGILTの影響を解析する。GILTノックダウン細胞、GILTノックアウトマウスを用いて解析する。

次年度使用額が生じた理由

フィリピン・サンラザロ病院との共同研究契約を終結した。CAB studyは既に倫理委員会の承認を得ている。そこで、ジフテリア菌に感染したことを確認するため、患者血清中のジフテリア菌に対するIgM/IgG抗体を検出するELISAキットを注文した。しかし、納品までに長い時間がかかり、2022年度ではなく2023年度に納品されることになり、次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件)

  • [国際共同研究] サンラザロ病院(フィリピン)

    • 国名
      フィリピン
    • 外国機関名
      サンラザロ病院
  • [雑誌論文] Rab3a, a small GTP-binding protein, is required for the stabilization of the murine leukaemia virus Gag protein2022

    • 著者名/発表者名
      Izumida Mai、Kakoki Katsura、Hayashi Hideki、Matsuyama Toshifumi、Kubo Yoshinao
    • 雑誌名

      Small GTPases

      巻: 13 ページ: 162~182

    • DOI

      10.1080/21541248.2021.1939631

  • [雑誌論文] IDO1, FAT10, IFI6, and GILT Are Involved in the Antiretroviral Activity of γ-Interferon and IDO1 Restricts Retrovirus Infection by Autophagy Enhancement2022

    • 著者名/発表者名
      Kubo Yoshinao、Yasui Kiyoshi、Izumida Mai、Hayashi Hideki、Matsuyama Toshifumi
    • 雑誌名

      Cells

      巻: 11 ページ: 2240~2240

    • DOI

      10.3390/cells11142240

  • [雑誌論文] Unique Mode of Antiviral Action of a Marine Alkaloid against Ebola Virus and SARS-CoV-22022

    • 著者名/発表者名
      Izumida Mai、Kotani Osamu、Hayashi Hideki、Smith Chris、Fukuda Tsutomu、Suga Koushirou、Iwao Masatomo、Ishibashi Fumito、Sato Hironori、Kubo Yoshinao
    • 雑誌名

      Viruses

      巻: 14 ページ: 816~816

    • DOI

      10.3390/v14040816

  • [学会発表] 宿主防御因子GBP2によるウイルスEnv糖蛋白質切断抑制に対するマウス白血病ウイルスの回避機構2022

    • 著者名/発表者名
      久保嘉直、泉田真生
    • 学会等名
      日本ウイルス学会学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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