研究課題/領域番号 |
22K08591
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
萩原 真生 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (70647586)
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研究分担者 |
加藤 秀雄 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (00905432)
山下 誠 愛知医科大学, 愛知医科大学, 客員教授 (50742722)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ウイルス性呼吸器感染症 / 腸-肺相関 / 感染制御・防御 / リピドミクス / プロバイオティクス |
研究実績の概要 |
ウイルス性呼吸器感染症は毎年多くの死者を出す重篤な疾患であるにも関わらず、治療法が確立していない場合や、ワクチンや治療薬が存在するものの、病原ウイルスの高変異原性のため恒常的に使用が可能なワクチンの作製は困難であることがある。そのため、特に流行を予測できない系統亜型や新型のウイルス感染症に対する予防や治療法の開発は社会的な急務である。 これまでに我々が実施したインフルエンザウイルス感染マウスを使用した研究によって、酪酸産生菌であるClostridium butyricumを経口投与すると、コントロール群(無治療)よりも、腸管で産生促進されたω-3系不飽和長鎖脂肪酸(18-HEPE)が肺の上皮細胞でInterferon (IFN)の産生量を増加するだけでなく、肺組織中のウイルス量の減少やマウスの生存率が改善されることを認めている(Hagihara M, et al. Cell Reports. 2022;41:111755)。そこで本年度は、酪酸産生菌の経口投与時におけるIFN産生促進作用の作用機序を明らかにするために、マウスの肺上皮細胞のIFN産生に関わる遺伝子の発現量を網羅的に調査したところ、Interferon regulation factor (IRF)-1/-7が活性化していることを明らかにした。さらに、C. butyricumを経口投与によるIFN-λの産生促進作用への関与を明らかにするために、KOマウスを用いて評価した結果、IRF-1/-7KOマウスでは、C. butyricumの経口投与によるIFN-λの産生促進作用が減弱し、肺組織におけるウイルス量の増加とウイルス感染による症状の増悪(体重減少の増強・死亡率の上昇)を認めたことから、C. butyricumの経口投与におけるIFN産生促進作用に、肺上皮細胞のIRF-1/-7の関与が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画の作成当初から予定していた、インフルエンザウイルス感染モデルマウスの確立がスムーズにできたため、酪酸産生菌であるClostridium butyricumを使用した薬効評価実験と、その作用機序の解明を目的とした研究がほぼ予定通りに実施することができた。今後は、本年度に構築した、RSウイルス感染モデルとSARS-CoV-2感染モデルを用いて、Clostridium butyricumを使用した薬効評価実験と、その作用機序の解明を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Clostridium butyricum(の経口投与)がもたらす抗ウイルス効果の汎用性とより詳細な作用機序の解明を試みる。具体的には、(1)酪酸産生菌がRSウイルスやSARS-CoV-2によるウイルス性呼吸器感染症に効果を示すのか評価を実験モデルを実施する予定である。(2)作用機序の解明では、昨年度に明らかにした、酪酸産生菌の経口投与によって腸管で産生が促進された長鎖脂肪酸による肺上皮細胞のインターフェロン産生促進効果に注目し、長鎖脂肪酸の受容体であるG protein-coupled receptor (GPR)120の関与を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に実施を予定していたLC-MS/MSによる特定の脂質濃度の測定が測定系の確立に時間を要し予定通り実施ができなかったため、予定していた経費の使用ができなかった。2024年度には測定系の確立ができ次第、検体の測定を開始していく予定であり、経費の使用をする予定である。
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