研究実績の概要 |
抗菌薬の治療薬物モニタリング (TDM) では血液中薬物濃度を指標とするが、痛みを伴う侵襲(採血)を避けることはできない。さらにTDMの正確性を向上させるため、頻回な薬物濃度測定による採血数の増加が懸念される中、非侵襲的なTDMの試みは行われていない。そこで、申請者らは唾液中薬物濃度に着目した。唾液中薬物濃度を用いることで、患者の負担だけでなく医療従事者の労力軽減にもつながる。 抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)薬の適正使用のために、バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシンの血液中薬物濃度を指標としたTDMが日常的に実施されている。また、近年上市されたダプトマイシン、リネゾリド (LZD) およびテジゾリド (TZD) も治療効果と血液中薬物濃度に深い関係性が報告されている。特に治療効果の指標であるPK/PDインデックスが血液中濃度曲線下面積 (AUC)/最小発育阻止濃度 (MIC) の場合、数回程度の血液検査では精度良く予測することは非常に難しいという問題点がある。本研究の目的は、抗菌薬の唾液中薬物濃度を新たな指標とする非侵襲的TDMの創出手法を開発することである。本研究課題は、感染症における個別化投与設計の質の向上に貢献すると同時に、抗菌薬の個別化投与の研究領域開拓に繋がると期待できる。 これまでに、健康成人6名を対象とした抗MRSA薬であるリネゾリド(LZD)の唾液中・血液中濃度の測定を行った。LZDを単回静注投与し、0,0.25, 0.5, 0.75, 1, 1.5, 2, 2.5, 3, 3.5, 4時間における経時的な唾液中および血液中薬物濃度を高速液体クロマトグラフィー(蛍光検出)にて測定した。
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