研究課題
インフルエンザに罹患した患者の一部は肺炎をきたし、最重症例は急速な粘液栓の形成により窒息にいたる鋳型気管支炎を発症する。しかしその重症化のメカニズムは不明である。我々は、重症化にいたった患者の背景にアレルギー素因があること、また病理所見上では過敏症反応を示唆する好酸球の浸潤と好酸球死を認めることを見出した。本研究の目的はインフルエンザ肺炎の重症化メカニズムを検討することである。特にインフルエンザ罹患時の重症化やインフルエンザワクチン接種後の副反応にアレルギーに類したメカニズムが関与するかという仮説を検証することが目標となっている。本年度は、インフルエンザに対する生体反応を評価するための系を検証した。具体的には血液中のIgE、リンパ球刺激試験、好塩基球活性化試験からなる。インフルエンザ抗原特異的なIgEの測定はELISA法として、市販されている抗原および、各社ワクチンを用いて抗原を溶解しプレートに固定化したのちに標準的な手法で行った。好塩基球活性化刺激試験はCRTH2陽性細胞のCD203発現をフローサイトメトリーで測定した。またPBMCをインフルエンザ抗原で刺激し、放出されたサイトカインを測定した。5名の患者の免疫応答を多角的に分析し系の有用性について検討した。今後は、重症度と生体の応答の関連を検討する。更に、類似の病態てある慢性好酸球性副鼻腔炎患者の検体を用いて、粘液栓の性状の定量的解析を行った。粘液栓中の細胞成分と非細胞成分の両方の粘液栓の対比、粘液栓の成分粘度をレオメーターで定量的に解析を行うことが出来た。
2: おおむね順調に進展している
鋳型気管支炎患者の検体収集が困難であり、他の疾患で検討を進めた
患者登録を進め、情報を収集する。稀な鋳型気管支炎については全国レベルでの患者登録を検討する。
患者登録が少なくに至らなかったため支出が少なかった。2024年度に予算執行を予定している。
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Journal of Allergy and Clinical Immunology
巻: 153 ページ: 1306~1318
10.1016/j.jaci.2023.11.925