現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和4年度に予定していた腹腔Mφを抗PrP抗体で処理するとM2Mφ様の細胞に分極することを確認した。この細胞は形態学的にはM2Mφであるが、M1Mφマーカー(CD68)とM2Mφマーカー(CD163, KLF4, MGL1/2, Ym-1)両者が陰性であった。培養上清(Conditioned medium)中の炎症性/抗炎症性サイトカインの産生量をELISA(Enzyme-linked immune sorbent assay)法で定量した結果、このM2Mφ様の細胞は炎症性サイトカイン(TNFα, CCL2, IL6, IFNγ, RANTES)が低下、抗炎症性サイトカイン(IL4, IL10)が増加していることを確認した。以上の結果から、抗PrP抗体はMφに直接作用してM1MφをM2Mφ様の細胞に分極することでサイトカイン・ストームによる重症化を回避するものと推定されたが、M2Mφ様の細胞についてより詳細な解析が必要である。これに関しては、M2Mφには複数のサブタイプ(M2a, M2b, M2c, M2d等)が存在することが既に報告されており、それぞれに特異的なMφのマーカー抗体を用い、フローサイトメトリーにて決定する。 腹腔Mφを抗PrP抗体で処理したM2Mφ様の細胞を質量分析法で解析した結果、Mφの細胞表面に局在する受容体蛋白質がSFKのリン酸化を担う有力候補として同定された。この受容体蛋白質のアゴニスト(リコンビナント蛋白質, 低分子化合物)がインフルエンザ重症化の治療薬に繋がる可能性がある。 上述した令和4年度の計画に加え、令和5-6年に計画していた抗PrP抗体に代わるリード化合物の探索を既に開始していることから、当初の計画以上に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
抗PrP抗体処理で分極するM2Mφ様の細胞の詳細について解析する。具体的には、腹腔MφをSR3335処理した典型的なM1Mφ(CD68陽性)、腹腔MφをIL4処理した典型的なM2Mφ(CD163, KLF4, MGL1/2, Ym-1陽性)と、M2Mφ様の細胞間で細胞の形態、マーカー蛋白質の発現量、炎症性/抗炎症性サイトカインの産生量について比較する。さらに、M2Mφのマーカー抗体を用いたフローサイトメトリーを実施して、Mφのサブタイプを決定する。 質量分析法で同定したSFKのリン酸化を担う受容体蛋白質の種々のアゴニストを腹腔Mφの培養液へ添加して、M2Mφ様の細胞への分極が認められるリード化合物を探索する。その際、M2Mφ様の細胞のSFKが特異的にリン酸化することをウエスタンブロット法で確認する。この過程で選別されたリード化合物についてはインフルエンザ感染マウスへの投与試験を実施し、マウスの生存率、体重減少、肺の炎症所見等の評価をする。同時に、ウイルス感染肺のMφでSFKのリン酸化が起こることを免疫組織染色にて確認する。治療効果の認められたリード化合物については、マウスへの薬剤の過剰投与試験を実施し、副作用の有無について検証する予定である。
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