研究課題/領域番号 |
22K08601
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田代 将人 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (20713457)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アスペルギローマ / 動物モデル / 病態 / 薬物動態 / 抗真菌薬 |
研究実績の概要 |
我々が開発した新規マウスモデルを用いて、菌球を含む組織の病理組織学的解析を行った。炎症細胞浸潤は、好中球とマクロファージについてそれぞれ抗Ly6G抗体・抗Iba1抗体を用いて免疫組織染色を行い、菌球面積に占める陽性細胞の割合を経時的に評価した。好中球、マクロファージが菌球中に占める割合は留置14週後にかけてそれぞれ51.7%、8.1%に増加していた。好中球は経時的に菌球の内部に浸潤していたが、マクロファージは菌球の周囲に集簇していた。これらの結果から、アスペルギローマへの慢性的な免疫応答において好中球、マクロファージが主たる役割を担っている可能性が示唆された。 また、アスペルギローマへのItraconazole (ITCZ)動態解析を実施した。菌球を留置後、ITCZ(1、5、10、20 mg/kg)を連続4日間腹腔内投与した。最終投与後7日までの血清、筋肉、および菌球を回収しITCZとOH-ITCZの濃度を経時的に測定した。血清中のITCZ、OH-ITCZ濃度は時間経過とともに速やかに低下し、20 mg/kg群でも最終投与後24時間後には検出感度未満となった。筋肉中濃度も同様の推移を示し、20 mg/kg群の最終投与24時間後におけるITCZ濃度は85.58±46.51 μg/g、OH-ITCZ濃度は検出感度未満であった。一方、菌球では20 mg/kg群の最終投与24時間後においてもITCZ濃度は1258.33±214.68 μg/g、OH-ITCZ濃度は588.21±16.77 μg/gと高値を維持していた。その他の用量群も同様の推移を示した。最終投与後24時間後において、ITCZは菌球に対し対筋肉濃度比で5.9~19.1倍の移行性を示した。これらの結果より、アスペルギローマへのITCZ移行性は周囲組織に比して良好であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アスペルギローマ周囲の炎症細胞の動態や薬物動態について、想定以上のペースで順調に研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
アスペルギローマの排除が遅延する原因をより詳細に探るため、2023年度はHarbor-UCLA Medical CenterのScott G. Filler, M.D.の研究室に出張し、同研究室が所有する様々な遺伝子を改変したAspergillus fumigatusを用いて実験を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は米国のHarbor-UCLA Medical Centerに出張して本研究を遂行することになったため、出張に伴う諸費用を2022年度中に要する可能性があり2023年度の経費の一部を2022年度に前倒し請求を行った。結果的に2022年度中に必要とする経費が想定よりも少なかったため、次年度使用額が生じた。2023年度は主に出張先で本研究を遂行するための日当の費用に経費を用いる。
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