研究課題/領域番号 |
22K08613
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
村上 圭史 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (10335804)
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研究分担者 |
吉岡 大介 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (30555131)
藤猪 英樹 慶應義塾大学, 医学部(日吉), 教授 (50356250)
瀬部 真由 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (60882595)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 緑膿菌 / バイオフィルム / 抗菌薬抵抗性 / トレードオフ |
研究実績の概要 |
細菌感染症において、細菌が活発に病原因子を産生すると急性感染症が惹起されるが、この段階では抗菌薬に対する感受性が高い。一方、バイオフィルムが形成されると、病原因子の産生は低下するものの、抗菌薬抵抗性を獲得するため、抗菌薬の十分な効果が得られず慢性感染症となる。抗菌薬抵抗性とは、遺伝子の変異を伴う耐性菌とは異なり、遺伝子発現の異なる細胞が一時的に抗菌薬の殺菌作用から免れる現象であり、単細胞生物である細菌があたかも多細胞生物のように振る舞い、集団の中で一部のものが生き残る非常に高度な生存戦略である。このように、病原因子の産生と抗菌薬抵抗性はトレードオフの関係となるものの、そのメカニズムは不明である。 病原因子の産生については、細胞密度探知機構であるQuorum sensing systemが、重要な役割を果たすことが知られており、バイオフィルム形成にも重要な役割を果たしている。しかし、抗菌薬抵抗性におけるQuorum sensing systemの役割はそれほど大きいものではない。 我々は、緑膿菌において、抗菌薬抵抗性に関与するオペロンが、病原因子の産生にも関わっている可能性を見出した。本研究では、このオペロンが病原因子産生/抗菌薬抵抗性のトレードオフを制御している、という仮説を立て、検証を行い、その制御機構を解明することを目的としている。 今年度は、ペグバイオフィルム法やコロニーバイオフィルム法を用いて、バイオフィルム中でこれらの遺伝子の発現を解析し、バイオフィルム形成において、発現が誘導されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィル感染症の流行により、自宅療養や自宅待機期間などがあり、マイクロアレイによる遺伝子解析の結果をもとに、RNA-seq解析を行う予定であったが、実施できていないため。 1)バイオフィルムによる遺伝子発現の解析 緑膿菌PAO1株を使用し、ペグバイオフィルム法およびコロニーバイオフィルム 法により形成されたバイオフィルム細菌を用いて,遺伝子発現の解析を行ったところ、オペロンを形成する2つの遺伝子はともに、24時間にその遺伝子の発現量は増加していた。 2) マイクロアレイによる遺伝子発現の解析 RNA-Seq解析を行う予備検討として、プラスミドによりそれぞれの遺伝子を強発現した株を作製し、浮遊菌として培養したそれぞれの細菌の遺伝子発現について、マイクロアレイによる網羅的な遺伝子解析を行った。現在その結果を解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、RNA-Seqを実施し、それぞれの遺伝子を強発現した際のQuorum Sensingやその関連遺伝子、その他の遺伝子の発現について、より詳細に検討する予定である。また、最も生体でのバイオフィルム形成の状態に近いと考えられている、フローセルバイオフィルムシステム系を確立させ、バイオフィルム形成における、経時的な遺伝子発現についても解析する予定にしている。 また、緑膿菌臨床分離株における、これらの遺伝子の保有状況についてもPCRにより解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症の流行のため、予定していたRNA-Seq解析が出来ず、そのための物品費が使用できず、残金が生じた。令和5年度は、RNA-Seq解析やリアルタイムPCR等の遺伝子発現の解析、分子生物学実験用試薬類の消耗品等を購入する。また、研究成果発表のための学会等への出張旅費等に使用する。
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