研究課題/領域番号 |
22K08616
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
大倉 喬 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 研究員 (20644975)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | SARS-CoV-2 / 光制御型パラミクソウイルス / ワクチン / 中和エピトープ解析 / 流行予測 |
研究実績の概要 |
本研究では、①BSL2でも使用可能なSARS-CoV-2のSタンパク質を発現する組換えパラミクソウイルスを作製し、さらに青色光照射時にのみウイルスが増殖する光応答性を付与することである。加えて、②このSタンパク質発現光応答性ウイルスを用い、SARS-CoV-2に対する中和抗体存在下でエスケープミュータントを作出し、そのSARS-CoV-2-Sタンパク質の機能獲得能を明らかにすることを試みている。これまでに、ミニゲノムアッセイにてセンダイウイルス(SeV)およびSeVウイルスと同じレスピロウイルス属に属する牛パラインフルエンザウイルス3型(BPIV3)のLタンパク質遺伝子内にそれぞれ光制御遺伝子を導入し、光制御が可能な箇所を検討した。SeVおよびBPIV3のLタンパク質内のドメイン間を介在するhinge1およびhinge2領域内にそれぞれ光制御遺伝子Magnetを挿入した変異体Lタンパク質を多数作製した。青色光照射時において、最もLタンパク質のポリメラーゼ活性が高い変異体をミニゲノムアッセイにて選別した。これら光制御遺伝子をLタンパク質遺伝子内に挿入した各ウイルスゲノムcDNA発現プラスミドを構築した。光制御型組換えウイルスの作出を試みたところ、SeVでは、組換えウイルスはレスキュー出来なかった一方、光制御型BPIV3の作出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、光制御型SeVの作出を試みており、ミニゲノムアッセイにおいて青色光照射に応じてLタンパク質のポリメラーゼ活性が確認されていたが、最終的に光制御型SeVの作出には至らなかった。Alphafold2によりhinge2領域を含む周辺の構造予測を行ったところ、BPIV3に比べて、柔軟性を欠いた非常にタイトな構造を形成することが判明した。従って、当該hinge2領域に外来遺伝子である光制御遺伝子の挿入は困難であると推察される。一方、BPIV3の構造予測に関しては、当該hinge2領域は柔軟性を有し、外来遺伝子の挿入に耐え得るスペースも確認されたため、光制御遺伝子の挿入を許容したと考えられる。そのため、光制御型BPIV3の作出に成功したと推察される。
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今後の研究の推進方策 |
SARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質を光制御型組換えBPIV3ゲノムcDNA内に組込み、Sタンパク質がウイルス表面に発現した光制御型組換えウイルスを作出を試みる。SARS-CoV-2スパイクタンパク質は、最近の流行株の派生型オミクロン株も含め、各種バリアントのSタンパク質遺伝子を当該ウイルスゲノムcDNA内に組込む。また、ウイルス粒子内への取り込み効率を上げるために、Sタンパク質のcytoplasmic tailを改変する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度おいて、作出できなかった光制御型SeVについては光制御遺伝子を含むBPIV3-Lのhinge2領域をSeVの該当箇所に挿入したウイルスゲノムcDNA発現プラスミドを複数種作製する。また、光制御型BPIV3に対して、SARS-CoV-2の各種バリアント由来のSタンパク質遺伝子を挿入したBPIV3ゲノム発現プラスミドを構築し、Sタンパク質発現光制御型BPIV3の作出を試みる。また中和エピトープマッピングに必要な、各種中和抗体、血清(カクテル療法由来抗体、回復者患者血清、ワクチン接種者血清等)を購入し、上記Sタンパク質発現光制御型BPIV3を用いて、エピトープマッピングを行う。
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