研究課題/領域番号 |
22K08617
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
高塚 翔吾 国立感染症研究所, 真菌部, 主任研究官 (90609398)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Influenza / virus / Aspergillus / IL-10 / IAPA / COVID-19 / SARS-CoV-2 / CAPA |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ウイルス感染後に起こる続発性の真菌症により重篤な症状を呈するメカニズムについて菌側の病原因子と宿主応答の関係性から解析を進めるものである。インフルエンザウイルス感染後に続発する肺アスペルギルス症(Influenza-associated pulmonary aspergillosis : IAPA)は急激な炎症応答が誘導され、急性呼吸不全等の重篤な症状につながる。前年度までに肺胞マクロファージがAspergillus fumigatus由来のβグルカンを受け取ることによりIAPAの炎症応答を急激に亢進させることを示した。またIAPAのマウスモデルではAspergillus fumigatusの感染後、肺内の菌のクリアランスが正常に進まず肺内のβグルカン濃度が上昇し続けることも確認している。そこで令和5年度はIAPAにおいて菌のクリアランスが遅れる原理について解析を進めた。まず最初にインフルエンザ感染後のAspergillus fumigatus感染において抑制性サイトカインであるIL-10が多量に産生されていたことに注目した。IL-10は抑制性のサイトカインであることから菌を排除しようとする貪食細胞の働きも抑制するものと考えられたため、IAPA誘導時に抗IL-10抗体を投与したところ、肺内の菌数は有意に減少し、生存率も有意に回復した。さらにこのIL-10産生はインフルエンザ感染後にβグルカンを投与した際にも再現され、IL-10産生はDECTIN1を介したシグナルによって産生されるものであることがわかった。そしてDECTIN1を発現する細胞群を中心に生体内におけるIL-10の産生細胞を探索したところインフルエンザ感染によって誘導されていた抑制性の単球がその中心的役割を担っていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにIAPAのマウスモデル構築し、重症化する表現系を評価してきた中で、令和4年度までに重症化にかかわる菌側の主要な病原因子と炎症を進める責任細胞を特定することができた。また令和5年度までに菌のクリアランス障害をもたらす責任細胞も特定することができた。さらに第3の課題として計画しているCOVID-19に続発する肺アスペルギルス症(CAPA)のマウスモデル系に関しても現在条件検討を重ね系の構築に向けた作業を進めている。これらから総合的に判断すると当初の予定通りに計画が進んでいるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
IAPAの重症化メカニズムにおいて宿主側の主要な責任因子の候補として捉えているIFNγについてまだ十分に解析できていない。今後Flow Cytometry やELISA法を使用して発現解析を進めるとともに菌由来のβグルカンとの関係性についても探索していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度の最終月に発注手続きを行った物品の一部が納期の関係で翌年度の納品になってしまったため、一部の金額が繰り越されたように見えているが 当初の予定通りに使用できている。
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