研究実績の概要 |
糖尿病およびその関連因子が末梢動脈疾患、特に包括的高度慢性下肢虚血の病態進展(予後・重症度)に及ぼす影響を明らかにすべく、全国多施設の循環器内科・血管外科の協力を仰ぎながら、糖尿病の関連情報を含む末梢動脈疾患・重症虚血肢患者のデータベースの構築を引き続き進めるとともに、研究の作業仮説に応じてこれらを個別に、あるいは統合して、縦断的、および横断的に解析を進めた。まず、大腿膝窩動脈病変に対する薬剤溶出バルーン治療の前向きコホート(公開研究名:「大腿膝窩動脈病変を有する症候性閉塞性動脈硬化症患者に対する薬剤溶出性バルーンを用いた末梢血管内治療に関する多施設前向き研究」)のデータベースを用いて、糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬の末梢動脈疾患患者における処方実態と再狭窄リスクとの関連について分析した。糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬は心血管保護作用が期待される反面、下肢切断リスクとの関連が危惧されていたが、末梢動脈疾患患者での処方は珍しくなく、再狭窄リスクと有意な関連は認めないことが明らかとなった(Cardiovasc Diabetol, 2023; 22: 273)。さらに末梢動脈疾患患者と冠動脈疾患患者の前向きコホート(公開研究名:「冠動脈疾患および末梢動脈疾患患者の予後に関する多施設共同前向き観察研究」)のデータベースを分析し、糖尿病を含む症例背景ならびに予後との関連を明らかにした(Eur Heart J, in press)。 また、糖尿病患者における末梢動脈疾患、特に包括的高度慢性下肢虚血の進展リスクを明らかにすべく、下肢血流障害の進展リスクに関連する情報を含む糖尿病患者のデータベースについても、構築を進めた。
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