研究課題/領域番号 |
22K08631
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
辻田 麻紀 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (10253262)
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研究分担者 |
横山 信治 中部大学, 応用生物学部, 客員教授 (10142192)
奥平 桂一郎 大阪医科薬科大学, 薬学部, 教授 (10425671)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 遊離コレステロール / SR-BI / BLT-1 / NCI-H295 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトはSR-BIを介したHDL中のコレステロールの取り込み機序における新規の経路を仮説としている。 昨年度はスカベンジャー受容体B1(SR-BI)欠損マウスを用いた検討を行った。そこでは、尾側静脈より投与したマウスHDL中の放射標識コレステリルエステル(CE)が血中で遊離コレステロールへ(FC)と変換され、90分後の採血では野生型マウスと比較して有意に高値となった。これはHDL中のCEが血中でFCに水解されてからSR-BI受容体を介してFCとして取り込まれる仮説を指示する結果であった。 本年度での検討ではヒト副腎皮質細胞株NCI-H295を用いた検討を行った。副腎皮質は生体内で最もSR-BIを高発現している組織である。SR-BIの機能を阻害するBLT-1(Block lipid transport-1)で前処理した細胞へ放射標識CEと放射標識FCを組み込んだヒトHDLを添加すると、90分後にはHDL-CEの取り込みは僅かであったが、HDL-FCの細胞への取り込みが認められ、BLT-1を作用させた細胞でそれが有意に半減していた。これはSR-BI受容体によりHDL-FCが優先的に細胞に取り込まれていることを示す結果と考えられ、我々の仮説を支持する新たな結果を得ることができた。 HDL中のCEとFCの詳細な動態を検討するため、本年度はCEとFCを別の核種で標識し、更に詳細な検討を行う。またsiRNAを用いたSR-BIの発現低下細胞でも検討を行う準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SR-BIはコレステロールの細胞への取り込みに重要な受容体であるため、コレステロールを前駆体とするステロイドホルモンの合成が低下し、繁殖が困難である。個体数が十分に確保できず動物実験は実施できていないが細胞を用いた実験は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は放射標識コレステリルエステル(CE)と放射標識遊離コレステロール(FC)を別の核種を用いてHDLの標識をおこない、それぞれの動態の詳細を確認する。実験動物を用いた検討と細胞を用いた検討を計画している。更にHDLを血液中の酵素によりCEのFCへの水解が行われているとするとHDL-CEを血漿中タンパク質亜分画と作用させ、そのFCへの変化を測定し、血漿中タンパク質亜分画中の候補タンパク質をセレクトする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はSR-BIの阻害剤であるBLT-1を用いた検討が予想以上に成果をあげ、ヒト肝細胞並びにヒト副腎皮質細胞へ投与予定のSR-BIの発現を低下させるsiRNAの実験が次年度へ延長されたため、次年度使用額が生じた。
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