研究課題/領域番号 |
22K08633
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
宮塚 健 北里大学, 医学部, 教授 (60622363)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 糖尿病 / β細胞再生医療 / Pdx1 / リプログラミング / 内分泌細胞分化 / α細胞 / β細胞 |
研究実績の概要 |
糖尿病根治を実現するためには失われた膵β細胞機能を補うことが不可欠である。そうした中でβ細胞以外の細胞からインスリン産生細胞への分化誘導を促す再生医療が注目されている。我々は遺伝子改変マウスを用いて膵腺房細胞やα細胞からインスリン産生細胞へのリプログラミングを誘導することに成功してきたが(Miura M et al. EBioMedicine 2018, Wakabayashi Y et al. 2022)、実臨床へ応用するためには、低侵襲かつ高効率なβ細胞新生誘導法の開発が必要となる。 最近我々は抗グルカゴン抗体をマウスに投与することにより、α細胞の自己複製のみならず、α細胞新生が誘導されることを見出した(Himuro M et al. in revision)。このことは、グルカゴンシグナルの抑制が内分泌細胞の可塑性を修飾することを示唆しており、これを応用することによりβ細胞新生を効率的に誘導できる可能性がある。そこで本研究では、グルカゴンシグナルの抑制が転写因子Pdx1の異所性発現によるα-to-β reprogrammingの効率を改善する可能性を検証することを目的とした。 Cre-loxPシステムによりα細胞特異的かつタモキシフェン誘導性にFLAG-tagged Pdx1を発現する遺伝子改変マウス(Gcg-CreER; CAG-CAT-Pdx1; αPdx1マウス)を作製した結果、タモキシフェン誘導性にα-to-β reprogrammingを誘導することに成功した。αPdx1マウスにグルカゴン受容体拮抗薬(GcgRA)を経口投与し、β細胞新生効率を定量化した結果、GcgRA投与により有意に上昇した。 以上の結果はグルカゴンシグナル抑制がPdx1によるβ細胞新生効率を改善する可能性を示しており、低侵襲かつ高効率なβ細胞再生医療実現の一助となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グルカゴンシグナル抑制がα細胞からβ細胞へのリプログラミングを上昇させるという研究開始時の仮説が検証され、当初の計画通りに進んでいる。 今後、アデノ随伴ウイルス(AAV8)を用いた低侵襲化の可能性や糖尿病モデルマウスを用いたtranslationalな検証を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
【アデノ随伴ウイルス(AAV8)によるα-to-β reprogrammingの低侵襲化】 Pdx1を発現するAAV8を腹腔内に投与することによりα細胞特異的にPdx1を発現させ、α-to-β reprogrammingを誘導する。同時にグルカゴン受容体拮抗薬(GcgRA)を経口投与することにより、β細胞新生効率の改善を目指す。 【糖尿病モデルマウスを用いたtranslational approach】 前述のαPdx1マウスにアロキサンを投与することにより糖尿病を誘発させた後、GcgRAを投与する。α細胞特異的Pdx1発現およびグルカゴンシグナル抑制がα細胞新生効率に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より少ない維持費でマウスを飼育・繁殖することができた。2023年度はin vivo実験に多くの費用を必要とするため、「次年度使用額」に相当する金額をin vivo実験に使用する。
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