研究課題
本研究は、Tgの硫酸化が甲状腺ホルモン生合成に及ぼす影響について明らかにし、甲状腺濾胞機能調節機能の全体像を明らかにすることが目的である。初年度である2022年度は、以前行ったラット甲状腺FRTL-5細胞を用いて行ったDNAマイクロアレイの結果の再解析を行い、甲状腺機能遺伝子調節因子であるTSHの添加によって、変動がみられた硫酸化にかかわる遺伝子を抽出した。TSHにより、Sult1a1をはじめ、Sult1d1、Sult5a1、Tpst1、Tpst2、Chest12などの硫酸化に関わる遺伝子に変動がみられた。特に、Sult1a1はTSHによる強い発現抑制がみられた。Sult1a1は甲状腺ホルモンの硫酸化を触媒する主要な酵素である。DNAマイクロアレイの結果をもとに、real-time PCRおよびwestern blottingを用いて、TSHによるSult1a1のmRNAおよびタンパク発現の影響についてFRTL-5細胞を用いて実験を行った。Sult1a1はTSHの濃度依存性、時間依存性に遺伝子およびタンパク発現が抑制されるという結果が得られた。さらに、TSHによるcAMPシグナル経路を介した反応であることを確認するためにforskolinとdbcAMPを用いて実験を行った。FRTL-5細胞をforskolinとdbcAMPにより刺激したところ、濃度依存性および時間依存性にmRNAの発現が強く抑制される結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
実験計画に従い、研究は順調に進められており、甲状腺ホルモン生合成における硫酸化に主要な働きをもつSult1a1が、甲状腺機能調節因子であるTSHにより調節を受けていることが証明できる結果が出せている。
硫酸化に関わるSult1a1以外にもTSHにより変動がみられており、それらの因子について、甲状腺ホルモン生合成への関わりについての検討を行う。また、Sult1a1については、TSHなどの甲状腺ホルモン生合成調節因子による活性への作用の検討、形態学的な変化の証明を行う予定である。
2022年度は、ウェスタンブロッティング転写装置を購入予定であったが、研究室内の別機器を使用できたため、購入する必要性がなくなり、次年度使用額が生じた。次年度には、FRTL-5細胞の蛍光染色や硫酸転移酵素活性の測定を予定している。それらに用いる抗体や酵素活性キットの購入に費用がかかることから、それらの消耗品を購入することを予定している。
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Endocrine Journal
巻: 69 ページ: 1261-1269
10.1507/endocrj.EJ22-0055