研究課題/領域番号 |
22K08637
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
亀山 俊樹 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (60298544)
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研究分担者 |
長崎 弘 藤田医科大学, 医学部, 教授 (30420384)
田崎 加奈子 (齋藤加奈子) 藤田医科大学, 医学部, 講師 (50746906)
小谷 侑 藤田医科大学, 医学部, 講師 (60644622)
河田 美穂 藤田医科大学, 医学部, 助教 (90761601)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | SFEBq法 / 分散培養 / オルガノイド / RNA-seq / ダイレクト・リプログラミング |
研究実績の概要 |
まず、SFEBq法による視床下部神経細胞分化の際の遺伝子発現変化をRT-qPCRで詳細に解析を行った。SFEBq法により培養14日目に視床下部神経前駆細胞が生じるが、その後は、細胞を分散処理して平面培養(2D培養)条件下、またはセルカルチャー・インサート上でオルガノイド様細胞塊のまま(3D培養)培養を継続し、視床下部神経を分化・成熟させる。この際、2D培養下と3D培養下デバソプレッシン(AVP)神経の分化効率に違いがあることに着目した。そこでAVP神経以外の神経細胞についても分化効率を比較したところ、3D培養の方が高効率で分化する細胞種、反対に2D培養下の方が高効率で分化する細胞種、および2D培養でも3D培養でも分化効率は変わらない細胞種があることが明らかとなった。 このことから、2D培養と3D培養は、単純に神経分化効率に差があるばかりでなく、神経細胞の特異性を生み出す機構にも差異が生じていることが推測された。この差異を明らかにするため、培養14日目視床下部神経前駆細胞(PRE)、2D培養および3D培養でそれぞれ28日後の細胞からTotal RNAを生成しRNA-seqによりトランスクリプトーム解析を行った。その結果、Notchシグナル関連因子の他、AVP神経やオキシトシン(OXT)神経の細胞に関与することが知られているOtpやPou3f2等複数の遺伝子の発現が2D培養下と3D培養下で変化していることが明らかとなった。 一方で、視床下部神経ダイレクト・リプログラミング法の開発のため、今年度はES細胞(EB5細胞株)を用いて、視床下部神経細胞分化に必要な遺伝子群の組合せの検討を行った。その結果、ある転写因子の組合せによりAVP神経、OXT神経の分化を誘導する事に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究費には限りがありその中で確実に目標を達成させるため、当初計画に合ったscRNA-seq解析は断念せざるを得なかった。しかしながら、複数の分化条件の検討と丹念なRT-qPCRによる分化効率の比較により、2D培養と3D培養の培養条件の違いで、単純に神経分化効率に差があるばかりでなく神経細胞の特異性を生み出す機構にも差異が生じていることが推測される結果を得たことがブレークスルーとなった。実際RNA-seq解析で各培養条件でのトランスクリプトーム比較をしたところ有望な候補遺伝子を複数得ることができた。 ダイレクト・リプログラミングに向けては、VierbuchenやPangらによるBAMN因子、BAMN因子のいくつかはこれまでの研究で解析を進めていたので、これらの因子を基礎に既知のAVP神経分化関連遺伝子を組合せることで、効率的に解析を進める事ができた
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今後の研究の推進方策 |
トランスクリプトーム比較解析により得られた複数の候補遺伝子についてAAVベクター系を用いた強制発現実験を行うことで、SFEBq法による特異的な視床下部神経細胞の分化・成熟機構を明らかにする。さらにAVP-GFPラット、OXT-RFPラット、AVP-GFP/OXT-RFPダブルTgラット由来神経前駆細胞のクローナル培養実験、GFP/RFP陽性細胞のトランスクリプトーム解析を通じてAVP神経およびOXT神経の特異的分化を制御する因子を突き止めていきたい。 ES細胞を用いた強制発現実験で明らかとなった候補遺伝子の組合せを、線維芽細胞に強制発現することでダイレクト・リプログラミングによって視床下部神経細胞分化を誘導できるか検証していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプル調製の都合上、RNA-seq解析の一部を次年度に計上することとなったため。
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