研究実績の概要 |
2型糖尿病発症後に、膵β細胞が慢性的に高血糖に曝されると、β細胞におけるインスリン生合成および分泌障害はさらに顕著化するという悪循環に陥る。この現象はブドウ糖毒性として臨床的にも広く知られている。申請者らはこれまでにこのブドウ糖毒性の分子機構に酸化ストレスおよびその下流のストレスシグナル経路の活性化が関連することを報告している(Kaneto H et al. Int J Mol Sci, 2021; Kaneto H et al. J Diabetes, 2016; Matsuoka T, Kaneto H et al. Diabetes, 2010)。 また申請者らは一貫してインスリン遺伝子の極めて重要な転写因子であるMafAおよびPDX-1に関する研究に携わっている(Obata A, Kaneto H et al. Diabetologia, 2019; Kimura T, Kaneto H et al. Diabetes Obes Metab, 2018; Matsuoka T, Kaneto H et al. Diabetes, 2017; Sasaki S, Kaneto H et al. Diabetologia, 2015)。そうした中で申請者らは、ブドウ糖毒性による膵β細胞障害にはMafAおよびPDX-1の発現の低下が深く関与すること、またその分子メカニズムなどに関して論文報告している(Kaneto H et al. Int J Mol Sci, 2020; Yamamoto K, Kaneto H et al. J Biol Chem, 2013)。さらに、2型糖尿病モデルマウスにおいて、Cre-loxPシステムを用いて、MafAやPDX-1の発現を保持すると、インスリンの生合成、グルコース応答性インスリン分泌が改善し、血糖コントロールも改善することを報告している(Kaneto H et al. Biomedicines, 2022; Matsuoka T, Kaneto H et al. J Biol Chem, 2015)。
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