研究実績の概要 |
食の欧米化や運動不足などライフスタイルの変化に伴う肥満症とそれに起因する糖尿病や脂肪肝などの生活習慣病の増加が問題となっている。肥満対策法としてエネルギーを熱として散逸する褐色脂肪が関心を集めているが, ヒト褐色脂肪は加齢に伴い退縮するため増量する方法を明らかにする必要がある。本研究では, 白色脂肪を褐色脂肪に転換させるハムスターをモデルとして用い, 組織リモデリング機構の分子基盤を解明することを目的とした。 今年度は、脂肪組織リモデリングと関連してリン酸化されるある細胞骨格タンパク質について、マウスとハムスターを用いて検討を行った。ハムスターでは発達期に白色脂肪組織が褐色脂肪組織に転換するが、その過程で細胞骨格タンパク質がリン酸化された。また、マウスに寒冷刺激を与えると、褐色脂肪組織において細胞骨格タンパク質がリン酸化され、数日にわたり持続した。阻害剤を用いた実験では、褐色前駆細胞で重要だとされている血小板由来成長因子(PDGF)シグナルの下流で細胞骨格タンパク質がリン酸化されることが示唆された。また、前駆褐色脂肪細胞株HB2ではPDGF刺激により細胞骨格タンパク質のリン酸化が検出された。 前駆細胞での細胞骨格タンパク質の役割を明らかにするために、前駆細胞マーカーPDGF受容体(PDGFR)と細胞骨格タンパク質の共染色を試みたが、良好な染色結果は得られなかった。そこで、タモキシフェン誘導性にPDGFプロモーターの下流でCREを発現するマウスとCRE依存的にEGFPを発現するマウスを導入し、掛け合わせることでPDGFR細胞をトレースできるマウスを作出した。PDGFR細胞が蛍光ラベルされることが確認できたため、今後PDGFR細胞の単離実験と組織染色により細胞骨格タンパク質の局在を明らかにする予定である。
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