研究課題/領域番号 |
22K08642
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金子 慶三 東北大学, 大学病院, 講師 (60546141)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 糖新生 |
研究実績の概要 |
研究目的は生体における腎糖新生の役割を解明することである。腎糖新生は絶食中に全身の糖産生に対する割合が増加することがしられている。そこで、主要な糖新生酵素であるPEPCKを誘導性に腎臓選択的に欠損させたマウス(以下腎-PEPCK KOマウス)を作製し絶食中における表現型の解析を行った。令和4~5年度にかけては、まず腎-PEPCK KOマウスの腎代謝を含めた全身代謝の解析を実施する予定であった。 腎-PEPCK KOマウスを24時間絶食させたところ、対照マウスに比べて血糖値には変化を認めなかった。しかし、PEPCKを介する糖新生の基質である乳酸を負荷したところ、腎-PEPCK KOマウスでは対照マウスに比べて有意に高い血糖値を呈した。この結果は、他の主要な糖新生臓器である肝臓が代償的に働き腎-PEPCK KOマウスの絶食中の血糖値維持に関与している可能性を示唆している。 PEPCKは、ミトコンドリアTCAサイクル内の代謝物の細胞質への移動を促進させることにより、グルコース産生を増加させることがしられている。そこで、腎-PEPCK KOマウスの腎臓内のTCAサイクルの中間代謝物を測定したところ、対照マウスに比べてそれらが著しく上昇していることがわかった。このことは腎PEPCKの欠損により腎におけるTCAサイクルの流れが停滞していることを示唆している。 これらの結果は、腎臓のPEPCKを介した糖新生が全身の糖代謝のみならず、腎臓内TCAサイクルの機能に関わることを示している。ここまでの研究結果を発展させることで、腎臓の糖新生が絶食中の腎機能へ関与するという新しい発見につながることが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腎-PEPCK KOマウスを絶食させる時間の条件検討を行ったが、その条件検討に予想以上に時間を要した。また、腎臓の遺伝子やタンパク、代謝物の解析も進めているが、一度の実験で採取できる腎臓の量は多くなく、コホートを用意するのに期間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、腎-PEPCK KOマウスの腎臓内エネルギー代謝について解析しており、それらの変化が腎機能へ与える影響について評価をする。また、腎機能は水分や電解質バランス制御に必須の臓器であるのみならず、全身のエネルギーバランスへも関与している。マウスを用いることにより、腎糖新生が全身の代謝恒常性へ果たす役割の解明を目指す予定である。
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