研究課題
近年のオミクス解析の発展に伴い、アルドステロン産生腺腫(APA)の分子生物学的特徴の理解が進んでいる。ステロイド合成酵素の免疫染色の結果からAPA組織の腫瘍内不均一性が予想されており、APAの発症メカニズムを理解する上で重要と考えられるが、従来のbulk RNA-seqによるアプローチでは詳細な解析が困難であった。今回、Single Nucleus RNA-seq解析(snRNA-seq)を行い、APA特異的なクラスターの抽出とその特徴を解析した。非機能性副腎腫瘍(NF)、APAの2種類の凍結腫瘍検体より核抽出を実施し、FACSで精製を行った。BD Rhapsodyで核とバーコード付きビーズを結合し、逆転写の後にTAS-Seqによるライブラリー調整およびシーケンシングを行い、Seuratで解析を実施した。NF:2188個、APA:3993個の計6181個の核が解析できた。NFとAPAを比較し、アルドステロン合成酵素をマーカーとするAPAに特異的な複数のクラスターを同定した。擬似時系列解析により、それらのクラスター間の関係は、ステロイド合成酵素の発現量に応じた分化度の違いを反映していると推定された。さらにAPA 37症例のbulk RNA-seqのデータを使用し、snRNA-seqに基づきdeconvolution解析によってクラスターの構成を推定したところ、同一の体細胞変異を有するAPA間でもクラスターの構成に不均一性があることがわかった。腫瘍検体を用いたsnRNA-seqはAPAの腫瘍内、並びに腫瘍間不均一性の評価とその病態への関わりの解析に有用である。
2: おおむね順調に進展している
副腎組織を対象にしたシングル核解析技術の確立に成功しており、おおむね順調であると考えられる。
進捗は順調であり、解析症例の対象数を増やして知見の蓄積と機能解析を行う。
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