研究課題
膵β細胞は胎生期および幼少期に増殖すると考えられており、特にエピジェネティックな因子が重要であることが各施設から報告されている。しかしながら、エピゲノム以外にも膵β細胞量の調節因子は存在しており、それらがどのような機序で膵β細胞量調節に寄与しているかはよく知られていない。代表者は、これまでに膵β細胞にてアミノ酸欠乏センサーであるGCN2が欠損・不活性化すると、mTORC1活性が亢進することによって膵β細胞量が減少することを報告した。この現象は成体マウスでの現象であり、もっと早い段階についてはよくわかっていない。また、胎生期の膵β細胞は母親の栄養状態に大きく影響されることから、タンパク摂取量が減少すれば、胎児の膵β細胞におけるGCN2が活性化されることが予想される。そこで今回、代表者は膵β細胞特異的GCN2ノックアウトマウスを交配させ、妊娠中にアミノ酸欠乏食を投与することによって、「食事制限する妊婦」のモデルマウスを作製した。このマウスは出生時においては、大きな体重減少や奇形なども認められず、対照群と差のない表現型を示した。成長後においても明らかな体重変化や随時血糖値の異常は認められなかったものの、OGTTにより有意な耐糖能異常が認められた。この原因を検討すべく膵β細胞量を測定したところ、GCN2ノックアウトマウスにおいて、有意な膵β細胞量低下が認められた。
3: やや遅れている
マウスケージ数が十分に確保できず、アミノ酸欠乏状態下でのGCN2ノックアウトマウスの解析が思うように進展しなかった。
表現型の解析をもう少し確認する必要があるが、それらを確定させたうえで、膵島における分子メカニズムの解明を進めたいと考えている。
マウスを飼育するための動物飼育施設利用料が増加したため、2023年度の支出が予定よりも増加した。前倒し請求額と実際の施設利用料に差が生じたため、次年度使用額が生じた。2024年度はマウス飼育数は減少予定であるため、予定通り研究は進捗するものと考えている。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 652 ページ: 121-130
10.1016/j.bbrc.2023.02.035.