研究実績の概要 |
エネルギー消費を担う褐色・ベージュ脂肪細胞は肥満治療のターゲットとして期待されている。本研究では寒冷刺激、β3アドレナリン受容体刺激により褐色化した白色脂肪組織は褐色脂肪組織と同様に中性脂肪由来の遊離脂肪酸を積極的に取り込み、脂質代謝の改善、異所性脂肪蓄積の抑制、抗肥満作用をもたらすこと、更にこの作用に交感神経を介した内皮細胞の活性化が関与することを遺伝子改変動物等を用いて検証する 褐色脂肪組織由来の内皮細胞と白色脂肪組織由来の内皮細胞の遺伝子を網羅的に検討するためaffymetrics社のアレイclariomSを使用し遺伝子発現解析をおこなった。褐色脂肪由来の内皮細胞では白色脂肪由来の内皮細胞と比較して遊離脂肪酸の取り込みに関連する遺伝子に加えて興味深いことに褐色脂肪細胞/ベージュ細胞に特徴的な遺伝子であるUCP-1, CIDEA, PPARGC1A, COX7A1, COX8B, PRDM16は褐色脂肪組織由来の内皮細胞においても上昇していた。褐色脂肪組織は多数の交感神経線維とその終末により網目様に密に取り囲まれ交感神経支配に富むのに対し、白色脂肪組織では交感神経終末とのシナプスはほとんど存在しない。交感神経活性が褐色・白色脂肪細胞の遺伝子発現の差に寄与するが、褐色脂肪組織と白色脂肪組織の血管内皮細胞の表現型の差異にも交感神経活性が関与するのではないかと考えられた。今後はβ受容体を欠損したマウスを用いて内皮細胞の表現型を解析する予定である。
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