研究実績の概要 |
慢性代謝疾患を予防する食品成分としてタンパク質の働きに着目し、本研究ではマウスに乳清タンパク質ホエイプロテインと大豆由来タンパク質β-コングリシニンをそれぞれ食事に加え摂取させた際の腸・肝・脳における応答機構と代謝制御について、摂食シグナルとされている胆汁酸に焦点を当て明らかにし、更に、前記生体応答におけるセロトニンの役割について明らかにすることを研究目的としてマウスを用いた実験を行った。 ①ホエイプロテイン又はβコングリシニン摂取に対する腸内応答機構の解明:小腸で胆汁酸結合蛋白FXR-FGF15の遺伝子発現と血中FGF15濃度、小腸で胆汁酸結合蛋白TGR5-GLP-1の遺伝子発現と血中インスリン濃度、小腸におけるセロトニン合成酵素TPH1遺伝子発現と血中セロトニン濃度を同定した結果、両タンパク質は反対の作用を呈した。 ②ホエイプロテイン又はβコングリシニン摂取に対する肝内応答機構の解明:肝臓で胆汁酸合成系を促すFXR,SHP,CYP7A1等の遺伝子発現、肝臓で糖新生系を促すG6Pase, PEPCK, PGC1α等の遺伝子発現、肝臓内セロトニン受容体の遺伝子発現の変化と新たな受容体機能の探究、肝臓における胆汁酸代謝(1次胆汁酸)の分析等を行った結果、両タンパク質は反対の作用を呈した。 ③ホエイプロテイン又はβコングリシニンの摂取に対する脳内応答機構の解明:前記両タンパク質の経口摂取は共に食欲抑制と体重減少作用を呈した。視床下部の食欲調節関与ペプチドの遺伝子発現をqRT-PCRで同定した結果、両タンパク質は、同様の前記遺伝子発現の変化を呈した。 以上のことより、摂食シグナル伝達に関して、前記2種の蛋白質は体内で腸管ー肝臓へは反対の作用を呈するが、脳への作用は同様であることが示唆された。
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