• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

死細胞貪食に伴う脂質ストレスとNASH発症機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K08667
研究機関名古屋大学

研究代表者

伊藤 美智子  名古屋大学, 環境医学研究所, 特任准教授 (00581860)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードコレステロール / リソソーム / マクロファージ / 死細胞 / 線維化
研究実績の概要

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH: non-alcoholic steatohepatitis)では肝細胞死の増加が特徴であり、慢性炎症や線維化の起点となると考えられる。申請者らは死細胞をマクロファージや線維芽細胞が取り囲み、貪食処理する病理学的構造としてCLS(crown-like structure)を報告した。CLS構成マクロファージは疾患特異的なマクロファージ亜集団であると考えられるが、これまでにコレステロール蓄積とリソソームストレス増強を示唆するデータを得ている。コレステロール負荷によるマクロファージの機能変容とそのメカニズムを明らかにするため、in vitro実験系の確立に取り組んだ。ヒト単球細胞株であるTHP-1から分化誘導したマクロファージとマウス細胞株であるRAW264マクロファージ、初代培養として腹腔内マクロファージと骨髄誘導性マクロファージ(BMDM)を用いてコレステロール結晶添加実験を行ったRAW264マクロファージではリソソーム関連タンパクと炎症・線維化促進因子の発現が増加したが、その他のマクロファージでは反応が認められなかった。リソソーム生合成を制御する転写因子TFE3(transcription factor E3)の免疫染色では、RAW264・BMDMともに核内移行が認められたが、リソソーム構成タンパクであるLAMP1の免疫染色においてBMDMではリソソーム量の減少が認められた。以上から、マクロファージの種類によってリソソームストレスに対する応答性が大きく異なることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

NASH病態形成の核となるCLSを構成するマクロファージはCD11c陽性であり、他の散在マクロファージとは異なる特徴的な遺伝子発現プロファイルを有する。in vitroにおいてこの特徴を再現する実験系の確立に成功しており、今度、転写制御メカニズムの解明や線維化の実行細胞である線維芽細胞に対する作用など、疾患特異的活性化の病態生理的意義を明らかにする準備が十分整っている。

今後の研究の推進方策

マクロファージに対するコレステロール過負荷とリソソームストレス増強がどのようにNASHの病態形成に関与するか明らかにするため、in vitroにおいてコレステロール負荷に伴うマクロファージ活性化メカニズムとコレステロール引き抜きによる変化を検討する。RAW264は不死化した細胞株であるため、トランスクリプトーム解析やリソソーム機能評価などによって初代培養肝マクロファージとの比較を行う。また、正常肝、脂肪肝、NASHなど異なる病期の肝臓からマクロファージを単離し、コレステロールに対する反応性に違いがあるか検討する。

次年度使用額が生じた理由

コロナウイルス感染症の流行状況によって予定通りの規模で実験を行うことができないリスクを考慮してマウスの繁殖規模を縮小し、in vitro実験を優先して行った。現在は徐々に動物実験の比重を戻し、次年度はin vivo実験を中心に解析を行う予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Novel therapeutic potentials of Taxifolin for obesity-induced hepatic steatosis, fibrogenesis, and tumorigenesis.2023

    • 著者名/発表者名
      1. Inoue T, Fu B, Nishio M, Tanaka M, Kato H, Tanaka M, Itoh M, Yamakage H, Ochi K, Ito A, Shiraki Y, Saito S, Ihara M, Nishimura H, Kawamoto A, Inoue S, Saeki K, Enomoto A, Suganami T, Asahara N
    • 雑誌名

      Nutrients

      巻: 15 ページ: 350

    • DOI

      10.3390/nu15020350

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Role of cholesterol metabolism in macrophages in the pathogenesis of non-alcoholic steatohepatitis2022

    • 著者名/発表者名
      伊藤美智子、菅波孝祥
    • 学会等名
      第26回日本心血管内分泌代謝学会学術総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 中枢MC4Rシグナルによる肝臓の炎症慢性化機構2022

    • 著者名/発表者名
      付友紀子、伊藤美智子、田中都、Fu Bin、越智梢、吉岡直輝、菅波孝祥
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
  • [学会発表] マクロファージの脂質代謝障害に着目したNASH発症機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      伊藤美智子、田村篤志、金井紗綾香、白川伊吹、田中都、金森耀平、小川佳宏、菅波孝祥
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
  • [学会発表] NASH発症におけるマクロファージのリソソーム機能障害と病態生理的意義の解明2022

    • 著者名/発表者名
      伊藤美智子、金井紗綾香、白川伊吹、田中都、小川佳宏、菅波孝祥
    • 学会等名
      第43回日本肥満学会学術集会
  • [学会発表] The role of cholesterol overload in macrophages as a novel molecular mechanism of non-alcoholic steatohepatitis.2022

    • 著者名/発表者名
      伊藤美智子、菅波孝祥
    • 学会等名
      第100回日本生理学会大会
    • 招待講演
  • [備考] 名古屋大学環境医学研究所分子代謝医学分野

    • URL

      http://www.riem.nagoya-u.ac.jp/4/mmm/

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi