研究課題
長鎖脂肪酸をリガンドとする受容体GPR120は、腸管内分泌細胞に加えて脂肪細胞やマクロファージに発現している。GPR120アゴニストあるいは全身性GPR120欠損マウスを用いた既報から、脂肪細胞やマクロファージにおけるGPR120シグナルは炎症反応を負に制御し、高脂肪食摂取下の肥満およびインスリン抵抗性を改善すると考えられている。しかし、腸管におけるGPR120の機能は不明であり、肥満およびインスリン抵抗性への関与は明らかになっていない。本研究では、腸管特異的GPR120欠損マウス(KO)を作製し、糖あるいは脂質の単回摂取時の消化管ホルモン分泌や、高脂肪食摂取下の肥満およびインスリン抵抗性に対する影響を検討した。GPR120 mRNA発現量はWTと比較してKOの十二指腸、空腸、回腸、大腸で90%以上に低下していた一方、内臓・皮下・褐色脂肪、肺、脾臓、腹腔内マクロファージでは有意差を認めなかった。小腸の絨毛長、大腸の陰窩長、クロモグラニンA、GIP、GLP-1、CCK、PYY陽性細胞数は両マウス間で有意差を認めなかった。以上の解析から、腸管特異的にGPR120が欠損したマウスの作製に成功した。また、OGTT時の血糖値、インスリン、GIP、GLP-1、PYY血中濃度、CCK作用は両マウス間で有意差を認めなかった。OLTT時のGIP血中濃度はKOで有意な低下を認めた。血糖値、インスリン値、GLP-1、PYY血中濃度は有意差を認めなかった。OGTT時の胆嚢容積量および小腸リパーゼ活性はWTとKOの間で有意差を認めなかった一方で、OLTT時の胆嚢容積量は負荷後にKOで有意に増加し、小腸リパーゼ活性は負荷後にKOで有意な低下を認めた。以上の結果から、腸管におけるGPR120シグナル欠損は脂質摂取後のGIP分泌およびCCK作用を低下させることが示された。
2: おおむね順調に進展している
現在はKOマウスの作製・作出は順調に進んでいる。糖・脂肪の単回負荷試験は終了している。
現在は高脂肪食を用いた長期負荷試験を準備し、実感は順調に遂行している。今後の高脂肪食肥満化のマウスの表現型を解析して、表現型に差がある場合はその機序を明らかにする予定である。
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