研究課題
長鎖脂肪酸をリガンドとする受容体GPR120は、腸管内分泌細胞に加えて脂肪細胞やマクロファージに発現している。GPR120アゴニストあるいは全身性GPR120欠損マウスを用いた既報から、脂肪細胞やマクロファージにおけるGPR120シグナルは炎症反応を負に制御し、高脂肪食摂取下の肥満およびインスリン抵抗性を改善すると考えられている。しかし、腸管におけるGPR120の機能は不明であり、肥満およびインスリン抵抗性への関与は明らかになっていない。本研究では、腸管特異的GPR120欠損マウス(KO)を作製し、糖あるいは脂質の単回摂取時の消化管ホルモン分泌や、高脂肪食摂取下の肥満およびインスリン抵抗性に対する影響を検討した。KOマウスでは脂質摂取後のGIP分泌およびCCK作用を低下した。また高脂肪食負荷KOマウスでは、高脂肪食負荷野生型マウスと比較して、体重が軽度低下し、内臓脂肪量や肝臓内脂肪含有量が低下した。またインスリン感受性が高かった。KOの脂肪組織においてIL-6のサイトカイン発現が低下し、血中IL-6濃度も低下していた。脂肪組織や肝臓では、IL-6受容体によって制御される suppressor of cytokine signaling (SOCS)3の発現がKOマウスで低下していた。加えて、肝臓では脂肪合成に関わる遺伝子群の低下を認めた。以上から、腸管特異的なGPR120の欠損は脂肪組織におけるIL-6産生を抑制し、インスリン感受性の増加に寄与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
KOマウスの表現型解析は順調に終了した。
KOマウスでは、軽度に肥満の改善し、脂肪肝とインスリン抵抗性は大きく改善した。今後は機序解明を予定している。
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