研究課題
シトステロール血症は、ATP Binding Cassette Subfamily G Member 5/8 (ABCG5/8)の変異により、シトステロール等の植物ステロールが蓄積する常染色体潜性遺伝性疾患である。シトステロール血症では予後規定因子である早発冠動脈疾患や、生活の質を著しく低下させるアキレス腱炎などが問題となるが、それらを引き起こす症例とそうでない症例があり、その病態メカニズムは明らかにされていない。そこでまず、遺伝子解析にてABCG5/8に病原性変異を認め、診断基準にもとづいてシトステロール血症と診断した6症例について、血中シトステロール濃度の上昇の他、高LDLコレステロール血症、腱・皮膚黄色腫や早発性冠動脈硬化症、異常赤血球、溶血発作、血小板減少などの臨床症状の有無について詳細に情報収集を行った。また同症例において、超遠心法にて血清より各リポ蛋白分画(超低比重リポ蛋白、低比重リポ蛋白、高比重リポ蛋白)を分離し、リポ蛋白中のシトステロール濃度を液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)にて解析した。さらにシトステロール血症の鑑別疾患であり、同様に早発冠動脈疾患を来たす、家族性高コレステロール血症ホモ接合体、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体、および脳腱黄色腫症症例についても、本研究の解析対象に加え、共通の動脈硬化進展メカニズムの探索を開始している。また、シトステロール血症においては食事療法が極めて重要だが、コレステロールの多い食事を避けるとシトステロールが多く含まれる傾向があり、食事療法が困難であった。そこで第1回シトステロール血症患者の集いを開催するとともに、シトステロールを多く含む食品のしおり(PDFファイル)を作成し、同会にて共有した。
2: おおむね順調に進展している
シトステロール血症6症例において、ABCG5/8遺伝子の病原性変異部位の同定、各臨床症状の詳細な情報収集、血清および各リポ蛋白分画でのシトステロール濃度測定が完了しているため。
シトステロール血症6症例における、ABCG5/8遺伝子の病原性変異部位、各症状の有無とシトステロール濃度についての相関関係の有無を検討する。また過剰なシトステロールや食事由来の外因性因子が動脈硬化を進展させるメカニズムについて、動物モデル、細胞実験により明らかにする。
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