研究課題/領域番号 |
22K08673
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮澤 崇 九州大学, 大学病院, 講師 (30443500)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | NASH / 慢性炎症 / マイトファジー / mito-SRAI / 蛍光プローブ |
研究実績の概要 |
糖尿病・肥満などの生活習慣病の増加や超高齢化を背景として非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)あるいはNASH肝癌の罹患率が急増しており、脂肪肝からNASHを経て肝癌に至るNASHの発症・進展機構の解明と予防・治療法の開発は喫緊の課題である。本研究は、脂肪肝からNASHを経てほぼ全例が肝癌を発症するヒトのNASHの病態に酷似した経過を示す「NASHモデルマウス」と、ミトコンドリアの品質管理において重要な「マイトファジー活性を可視化する蛍光プローブ」を用いて、NASHの病態進展におけるミトコンドリア品質管理(マイトファジー)の意義を明らかにするとともに、ミトコンドリア機能やマイトファジー機能の改善がNASHの治療法となりうるかを明らかにすることを目指すものである。本年度は、NASHモデルマウスを用いてNASHの発症・進展過程の経時的変化を観察し、8週齢雄性MC4R-KOマウスに高脂肪食を負荷すると、負荷後5週目から肝細胞への脂肪蓄積が著明になり、10週目で炎症細胞の浸潤、15~20週で線維化が進展することが明らかとなった。また、高脂肪食負荷0、5、10、15、20週の肝臓からRNA及びタンパク質を抽出して、ミトコンドリアの分裂に関与するdynamin related protein 1(DRP1)や、DRP1が結合するアダプター因子の一つであるmitochondrial fission factor(MFF)やマイトファジー機能関連蛋白p62の発現を検討した。NASHの病態進展に伴って、ミトコンドリア分裂因子であるDRP-1やMffの発現に変化は見られなかったが、マイトファジー機能不全を示唆するp62の発現が増加することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NASHマウスの解析やサンプリングはほぼ計画通りに遂行できている。マイトファジーを検出可能なmito-SRAIプローブの導入が当初の予定より時間がかかり、当初の計画の進捗が遅れている。また、高脂肪食を負荷したNASHモデルマウスに対して効率的に蛍光プローブを導入する検討も、やや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、NASHモデルマウスに対する効率的な蛍光プローブの導入の条件検討をすすめている。また、ウィルスベクターによる導入がうまくいかなかった場合を考慮して、共同先の研究者と打ち合わせを行い、蛍光プローブ発現マウスの導入も検討をしているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
蛍光プローブの導入の遅れや、生体への導入の基礎検討の進捗の遅れにより予定より使用額が少なかったため、翌年度への繰越金とした。翌年度は繰越金と合わせて、基礎検討の遂行と新たな動物モデルの導入も検討する。
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