研究課題/領域番号 |
22K08682
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
八木橋 操六 東邦大学, 医学部, 教授(寄付講座) (40111231)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 2型糖尿病 / インスリン抵抗性 / 膵島血管 / 膵島神経 / 病理変化 / 細小血管障害 / 膵島アミロイド |
研究実績の概要 |
2型糖尿病の病的基盤としてインスリン分泌膵β細胞の減少およびインスリン抵抗性がある。しかしインスリン抵抗性がいかにβ細胞欠落と関連するかは不明である。また、インスリン抵抗性の度合いがいかに膵島の病理学的変化に反映されているかも知られていない。この問題を解決することにより、2型糖尿病の病態が大幅に明らかにされ、多様性のある2型糖尿病がより明確に理解されることが期待される。今回の研究では膵島β細胞の微小環境としての膵島血管および自律神経がヒト2型糖尿病でいかなる病的変化を呈するのか、インクレチンをはじめとする糖尿病治療がそれらにいかなる影響を与えているのかを検証し、これからの治療方針をたてることを目標としている。これまで蓄積された2型糖尿病の剖検例から得られた膵組織、および対照として年齢、性をマッチさせた非糖尿病症例から得られた膵組織を用いて、膵島での内分泌細胞分布、血管構築、神経分布について検討を行ってきた。その結果、ヒト2型糖尿病で大血管障害を合併する(インスリン抵抗性が強いと想定される)症例の膵島で高度のアミロイド沈着、血管減少、血管壁硬化、内腔狭窄、周皮細胞減少に加え、副交感神経脱失の所見を見出している。膵島β細胞量減少は、これらのアミロイド沈着、血管変化、神経脱失のレベルとおおまかに相関する傾向を呈しており、インスリン抵抗性がこれらの膵島変化を誘導した可能性が推定される。治療による影響はインクレチン、DPP4阻害薬、SGLT2阻害薬など併合された使用例が多く細分化される結果は得られていない。大血管障害を合併しない糖尿病症例では膵島でのアミロイド沈着は少なく、血管変化も目立たなかった。このような例では比較的予後のよいことが推定された。今後、インスリン抵抗性の規定をより厳密に定め、耐糖能異常、膵島変化との関連を探索する課題が残っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究開始時はコロナ蔓延が完全に終焉しておらず、研究計画にある膵組織の調達、膵島ホルモンに対する抗体、血管、および神経線維に対する特異的抗体などの調達に予想外の時間を要した。また、膵組織標本の作製、施設間輸送、染色実施など、病理担当技師の獲得などにも支障がみられ、実験、標本観察、病理解析などが遅れた。また、動物実験では自然発症糖尿病ラットなどの入荷でも予定を上回る時間を要し、実験なども入荷等速やかに行われず、解析などがやや遅れている。しかしながら、ヒト2型糖尿病膵組織については研究施設内で蓄積されたものがあり、部分的ではあるが病理評価に関しての評価は実施持続可能であった。観察結果も主にヒト糖尿病膵のデータが主体で、糖尿病治療の種類による個別の病理評価も進めており、断片的ではあるが新しい結果も徐々に蓄積されつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
蓄積されたヒト2型糖尿病の膵組織資料について、アミロイド沈着の解析、血管構造、神経線維分布のより詳細な検討など試み、膵島病変進展に関与する因子についてより明確な評価を試みる。また、今回の研究の実施で新たに浮上した問題点について、ヒト糖尿病症例より新鮮な資料を用いた分子病理学的探索や動物実験での解析を加えた研究の準備を整え、2型糖尿病の予防、あるいは進展阻止、さらには膵島修復に役立つ治療薬の開発など進めていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ蔓延状況で研究計画が遅れたため、試薬、動物など研究遂行に要する費用の使用が予定よりも少額であった。また、学会なども予定より参加が少なく、使用額が少なくなった。 次年度はヒト糖尿病膵の病理評価を持続、とくに治療別による病理変化の差異について検討を行う。そのため、膵島ホルモン、アミロイド、神経線維に対する特異的抗体など、追加の実験試薬の購入、学会発表費用などに使用する予定である。
|