研究課題/領域番号 |
22K08694
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
貞苅 良彦 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (80784503)
|
研究分担者 |
森山 大樹 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (70586859)
田村 公二 九州大学, 大学病院, 助教 (90909582)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 膵癌 / 口腔内環境 / 歯周病原細菌 / 腫瘍微小環境 |
研究実績の概要 |
近年、口腔内環境の悪化が発癌に関連することや腫瘍内の歯周病原細菌が癌の予後へ影響を与える報告はあるが、口腔内環境の改善が癌の進展を抑制する報告はまだない。本研究の目的は、膵癌患者の口腔内環境、特に歯周病原細菌に着目した膵癌の進展や化学療法の有効性に及ぼす影響を評価することである。 1.膵癌切除患者の口腔環境の評価と臨床データと化学療法の相関性の解析、2.In vitroでの歯周病菌が膵がん細胞株へ与える影響の解析、3.マウス膵癌モデルにおけるマイクロバイオーム解析、4.ヒト膵癌組織におけるマイクロバイオームに由来する分子の免疫染色解析法 これらにより、上記目的を達成することを目指している。口腔内環境と●の負の相関関係を明らかにし、In vitro, In vivoでの特定の歯周病原細菌XXが免疫抑制性細胞を誘導するサイトカインの分泌を促しており、腫瘍増大の促進や腫瘍浸潤T細胞の減少に関わることを明らかにした。さらに今後は歯周病原細菌XXが化学療法の抵抗性に関わるメカニズムを解析するため、マウス膵癌モデルでの解析を進めている。これらの研究成果は、歯周病原細菌が免疫抑制性微小環境を構築するメカニズムの一端を示すもので、新たな治療標的の発見につながる大きな成果である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.膵癌切除患者の治療介入前の口腔機能を評価した臨床データと化学療法、転移形成、予後の比較を行った。口腔内環境の条件と、化学療法の効果や予後に有意差は得られなかった。現在も症例の蓄積および術後経過フォローを行っており、今後も解析を継続していく。2.歯周病原細菌と膵癌細胞株を共培養し、特定の歯周病菌により膵癌細胞の遊走能と浸潤能の亢進することを明らかにした。3.膵癌細胞株を皮下移植したマウスの腫瘍内に特定の歯周病菌XXを投与すると、他の歯周病菌と比較して、腫瘍の増大を認め腫瘍浸潤性T細胞の減少と骨髄由来抑制性細胞の増加を明らかにした。4.腫瘍内に存在する歯周病原細菌XXと癌細胞の共培養実験により、マイクロバイオーム共存癌細胞が特異的に分泌するサイトカインYYを同定した。5.同定したサイトカインYYが膵癌の進展に重要であることをin vitro, in vivo実験で明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
マウス膵癌モデルでの歯周病原細菌の投与と化学療法の組み合わせで腫瘍増殖の変化を確認し、免疫細胞の変化を確認する。すでに同定しているサイトカインYYの変化を確認し、その阻害実験を薬理学的、遺伝学的に実施し、化学療法下での歯周病原細菌XXと膵癌との相互作用を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね順調に進んでおり、資金を有効使用できたため。次年度は培養用試薬、器材、抗体に使用予定である。
|