• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

酸感受性受容体を介したリンパ管内皮細胞の機能変化と転移進展メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K08699
研究機関和歌山県立医科大学

研究代表者

中西 雅子  和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60437382)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード酸性微小環境 / リンパ節転移 / リンパ管内皮細胞
研究実績の概要

癌組織は周囲の正常組織に比べて酸性に傾いている。本研究では、癌のリンパ節転移における酸性微小環境の役割を検討する目的で、リンパ管内皮細胞の機能変化に着目した。
これまで、ヒト皮膚リンパ管内皮細胞(HDLEC)を用いたin vitroの検討から、酸性環境により接着分子VCAM-1の発現が誘導されること、またその経路として酸感受性受容体GPR4が重要であることを示した。そこで、令和4年度はマウス悪性黒色腫細胞株B16F10-LM6を用いて、VCAM-1とGPR4を介したリンパ管内皮細胞と癌細胞との相互作用について解析した。B16F10-LM6は、VCAM-1リガンドであるVLA-4を発現しており、HDLECへの接着を示したが、HDLECに酸刺激を行うことでこの接着が有意に促進された。さらに、VCAM-1抗体の処置やHDLECにおけるGPR4発現を抑制することで、B16F10-LM6の接着が低下することが分かった。
そこでB16F10-LM6を用いたリンパ節転移モデルを作成し、VCAM-1抗体ならびにGPR4阻害剤の投与による転移への影響をin vivoで検討した。マウス足底部へB16F10-LM6を接種すると、膝窩リンパ節ならびに鼠径リンパ節への転移が生じたが、抗VCAM-1抗体ならびにGPR4阻害剤の投与はこれらリンパ節への転移を減少させた。これらの結果は、癌の酸性微小環境がリンパ管内皮細胞上に発現している酸感受性受容体GPR4を介して接着分子の発現を変化させ、癌細胞との接着性に影響することでリンパ節転移の成立に促進的に働いていることを示唆している。
今後はさらに、HDLECにおいてGPR4を過剰発現させた際の機能変化や、他の接着分子との相互作用について検討を加え、酸性微小環境の役割を総合的に考察する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ほぼ計画通りに進んでいる。現在までに得られた成果をまとめ、投稿準備中である。

今後の研究の推進方策

本研究課題を進めるなかで、接着分子の一つであるThy-1についても、酸性微小環境により発現誘導されること、また癌細胞におけるThy-1リガンド Integrin avb3の発現が酸刺激による促進されることが明らかとなった。そこで、令和4年度の続きであるGPR4の過剰発現系の検討に加え、リンパ節転移の成立過程におけるThy-1の役割についてもin vivoで解析する予定である。

次年度使用額が生じた理由

ほぼ予定通りの使用であり、小額が端数として残っている。令和5年度の使用予定額と合わせて、主として実験試薬や器具などの購入に充てる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] Functional alterations of lymphatic endothelial cells due to increased chemokine production in an acidic tumor microenvironment2022

    • 著者名/発表者名
      Akiya Ibe, Kazutaka Shinagawa, Kiyoto Morishita, Masako Nakanishi, Yasuteru Muragaki, Shogo Ehata
    • 学会等名
      第111回 日本病理学会
  • [学会発表] Acidic cancer microenvironment alters the function of lymphatic endothelial cells via increased chemokine production2022

    • 著者名/発表者名
      Masako Nakanishi, Akiya Ibe, Kiyoto Morishita, Mizuki Nishikawa, Shogo Ehata
    • 学会等名
      第81回 日本癌学会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi