研究課題
本研究は、機械学習を駆使して大規模ながん免疫治療患者の末梢血可溶性因子プロファイルから免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療効果の予測指数(Cytokine-based ICI Response Index; CIRI)を創出し、臨床応用に向ける患者層別化ツールの開発を目的とする。本年度では、本年度は、2016年9月から2021年2月までにICI治療を受けた非小細胞肺がん患者約200例から採取した血液(治療前・治療開始6週後)を用いて、マルチプレックスサスペンションアレイにより93種の可溶性因子の血中濃度を計測した。治療効果において、一次エンドポイントの全生存期間(OS)を予測ターゲットとした。機械学習アルゴリズムのRandom Survival Forest法を用いてOS予測に重要な可溶性因子を選出した。まず、Trainingコホートを用いて層別化モデルの構築したところ、ベースライン可溶性因子を用いてICI治療後のOS予測するのにC-indexが0.667であり、時間依存性ROC解析においてAUCが0.69~0.90を維持することが確認できた。CIRIに従って123例の患者を層別化した結果、high-riskグループと比べてlow-riskグループの中央生存時間が552日有意に(P<0.0001)長く、ハザード比(HR)が0.320であることが明らかになった。また、Validationコホート(登録期間2020年2月から2021年2月;99例)を用いたモデルの検証を行ったところ、OS予測にC-indexが0.700であり、時間依存性AUCが0.60~0.92を維持することが確認できた。CIRIでhigh-riskと予測されたグループに対して、low-riskグループのOSは521日有意に(P<0.0001)長く、HRが0.274であることが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
今年度では、CIRI開発のために使用するICI治療を受けた非小細胞肺がん患者約200例の末梢血可溶性因子プロファイル(治療前後)の計測を予定通り完了した。機械学習を用いて、一次エンドポイントのOSとの関連性を示すOsteopontinなどを含む可溶性因子シグネチャーを同定し、患者層別化マーカーとするCIRIを創出した。CIRIは、ICI治療の長期効果に高い層別化効果を示すことが確認できた。
臨床応用に向けて、CIRIの予測性能をもっと広い範囲での検証が必要である。別の独立した患者データセットを用いてCIRIの予測性能を検証・評価を行う。また、CIRIに関わるICIの作用メカニズムの解明に向けて、可溶性因子とほかの臨床指標・免疫細胞フェノタイプなどの間の関連性を調べることで、抗腫瘍機能を担う免疫細胞集団を同定し、その機能やICIの作用メカニズムについて調べる。
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Cancer Immunology, Immunotherapy
巻: na ページ: na
10.1007/s00262-023-03464-w
医学のあゆみ
巻: 281 ページ: 374-380