研究課題/領域番号 |
22K08729
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
奥村 高志 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (20449234)
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研究分担者 |
上野 康晴 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (60375235)
谷口 英樹 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70292555)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | IBMIR / ヒトiPS細胞 / 肝芽オルガノイド / 再生医療 / 門脈内移植 |
研究実績の概要 |
本研究では、肝臓内への細胞移植の阻害要因の一つである即時型血液介在性炎症反応(IBMIR)の低減法の確立に向け、ゲノム編集による精度の高いIBMIR惹起機構の解明及びIBMIR惹起因子を欠損したヒトiPSC肝芽の移植評価を試みる計画である。 令和4年度はまず、凝固カスケード因子のノックアウトiPS細胞株の樹立と評価を計画した。そのために、①実験動物に移植するヒトiPSC肝芽からIBMIR関連因子の発現を評価し、ノックアウトの対象とする遺伝子の選定を行った。また、②ゲノム編集技術により、IBMIRの上位に位置すると考えられる凝固カスケード構成因子(FactorIII等)を完全にノックアウトしたヒトiPS細胞の樹立を試みた。 ①については、実験動物に移植するヒトiPSC肝芽のサンプルを用いて、RNAシークエンスやマイクロアレイの発現解析を行った。その結果、凝固カスケード因子のFactorIIIに加え、補体など複数の炎症カスケード因子が、IBMIRの惹起に十分な発現を示すことを確認できた。さらに、ヒトiPSC肝芽は、報告のある複数のIBMIR抑制因子の発現が低いことも確認できた。加えて、発現量解析からノックアウトの対象となる候補遺伝子を数個に絞ることにもできた。そこで、②についてまず、凝固カスケードの主要構成因子であるFactorIIIのノックアウトiPS細胞株の樹立を試みた。その結果、片アリルのFactorIIIの機能欠損iPS細胞株を得ることに成功した。一方、両アリルの機能欠損株は得ることができなかった。今後は、ゲノム編集株の取得効率を上げるような方法改善を行い、完全にFactorIIIの機能を欠損したiPS細胞株の樹立を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度は、凝固カスケード因子のノックアウトiPS細胞株の樹立と評価を行う計画であった。まず、ノックアウトを行う血液凝固カスケード因子の選定を行うため、実験動物に移植するヒトiPSC肝芽のサンプルからIBMIR関連因子の発現を評価した。RNAシークエンスやマイクロアレイにより得られたデータから発現解析を行ったところ、凝固カスケード構成因子のFactorIIIや炎症カスケード因子である補体などがIBMIRを惹起するうえで十分な発現を示すことを確認した。また、報告のある複数のIBMIR抑制因子の発現が低いことも確認できた。そこで、当初より注目していたFactorIIIの機能欠損iPS細胞株の樹立を試みた。両アリルのFactorIII遺伝子の機能を破壊するためのコンストラクトを2種類作製し、ゲノム編集技術によるノックアウトを試みた。その結果、片アリルのFactorIII機能を欠損したiPS細胞株の樹立に成功した。しかし、両アリルの機能欠損株を樹立することはできなかった。そのため、令和4年度はFactorIII機能を完全にノックアウトしたヒトiPSC肝芽の評価には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ゲノム編集株の取得効率を上げるために、実験条件の変更を行って、引き続きFactorIIIの両アリル機能欠損株の樹立を試みる。両アリル機能欠損株の樹立に成功した場合、当初の計画に沿ってヒトiPSC肝芽の製造検討やIBMIRの軽減効果などの評価を進める。また、樹立株に対して、発現解析より得られた他候補因子の同時機能阻害を行うために、多重ノックアウト株の樹立も試みる。 一方、FactorIIIの両アリル機能欠損株を今年度の早い段階で取得できなかった場合は、樹立済の片アリル機能欠損株を用いてヒトiPS細胞肝芽の作製検討やIBMIRの軽減効果などの評価も進める予定である。
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