研究課題/領域番号 |
22K08750
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 孝司 京都大学, 医学研究科, 講師 (10378656)
|
研究分担者 |
羽賀 博典 京都大学, 医学研究科, 教授 (10252462)
進藤 岳郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (10646706)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 肝移植 / 抗体関連拒絶反応 |
研究実績の概要 |
肝移植後の免疫抑制療法の最適化は大きなアンメットニーズである。特にレシピエントリンパ球による移植肝の拒絶反応を抑制することは、積年の課題である。拒絶は患者のQOLを著しく損なうだけでなく、それに対する免疫抑制剤の多用は感染免疫や抗腫瘍免疫の減弱により致死的感染症や悪性腫瘍のリスクを増す。肝移植後の拒絶の様式は複数あり、各々時期や重症度が異なる。現在なお問題となっているのは、ドナー特異的抗HLA抗体(Donor-specific antibody: DSA)を伴う拒絶、抗体関連拒絶である。 本研究では次世代型解析により後方視的に移植肝組織標本の各免疫担当細胞群における発現蛋白質や細胞内シグナリング分子の網羅的解析を行い、抗体関連拒絶と相関するバイオマーカー候補を同定し、前方視的に末梢血での結果も合わせて検証することでレシピエント体内での免疫動態を明らかにする。 2022年度の計画として、京大病院肝移植(1,980例)の拒絶、DSA、肝病理を調査する。エピトープ解析はHLA Matchmakerを用い、エピトープ適合度を含めDSA、抗体関連拒絶、移植肝の線維化に有意に影響した因子を抽出する。 本年度の結果では、拒絶反応の結果、DSAの有無、肝病理を調査した。拒絶反応は全体の約40%に認められたが、ほとんどが細胞性拒絶反応であり、抗体関連拒絶反応の発生は、約5%程度であった。また、拒絶反応による生存の悪化は認めず、拒絶反応の有無での生存率に有意差は認めなかった。 また、DSAの発生に関するエピトープに関しては、抽出することができ、現在validataionを行っている。さらに細胞性拒絶反応、抗体関連拒絶反応の病理プレパラートをHyperion用の標本として染色し、比較検討の準備を勧めているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
京大病院肝移植(1,980例)の拒絶、DSA、肝病理を調査する。エピトープ解析はHLA Matchmakerを用い、エピトープ適合度を含めDSA、抗体関連拒絶、移植肝の線維化に有意に影響した因子を抽出する。 本年度の結果では、拒絶反応の結果、DSAの有無、肝病理を調査した。拒絶反応は全体の約40%に認められたが、ほとんどが細胞性拒絶反応であり、抗体関連拒絶反応の発生は、約5%程度であった。また、拒絶反応による生存の悪化は認めず、拒絶反応の有無での生存率に有意差は認めなかった。 また、DSAの発生に関するエピトープに関しては、抽出することができ、現在validataionを行っている。さらに細胞性拒絶反応、抗体関連拒絶反応の病理プレパラートをHyperion用の標本として染色し、比較検討の準備を勧めているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
患者集積と臨床情報の収集(2023-2024年度)前向き症例集積を開始する。新規移植症例に加え、移植後で現在外来フォローされている症例も対象とし、臨床経過として免疫抑制剤、拒絶の有無、DSA発生の有無の情報を収集する。 また、次世代型解析による末梢血と移植肝組織における免疫動態の比較解析(2023-2024年度)肝生検組織標本と同時期の末梢血検体を採取し、末梢血用のマスサイトメトリー(Helios)を用いて、上述の各細胞群における発現蛋白質および細胞内シグナリング分子の網羅的解析を行う。後方視的に抽出されたバイオマーカーの検証、移植肝組織と末梢血での結果の比較によりレシピエント体内での免疫動態を明らかにし、抗体関連拒絶発症を予測する新規マーカーを探索する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、臨床情報収集等が中心であり、今後、次世代Hyperionなどの染色等の実験を行うことにしたたため、使用費用が低く抑えることができた。今後は、基礎的な研究などが発生するため、使用費用が増えていくことが予想される。
|