研究課題/領域番号 |
22K08761
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
関 朋子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70528900)
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研究分担者 |
永山 愛子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00573396)
林田 哲 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80327543)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 乳癌 / Ductal carcinoma in situ / CRISPR/Cas9 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
本研究では、早期乳癌である非浸潤性乳管癌(Ductal carcinoma in situ, DCIS)が浸潤性乳管癌(Invasive ductal carcinoma, IDC)に進行するメカニズムを明らかにし、不要な手術の省略や薬物治療の開発をもって早期乳癌の個別化医療の実現の一助とすることを目的としている。具体的には、以下3つの手法を用いて研究を行っている。 1)患者検体のクリニカルシークエンシングを用いたDCISとIDCの遺伝子変異・遺伝子発現の違いを明らかにする。2)In vitroでのDCISモデルを用いたCRISPR/Cas9 knockout screeningで細胞増殖・悪性化の進行に必要と考えられる遺伝子を同定する。3)DCISのオルガノイドモデル、In vivoのマウスモデルを用いた癌細胞増殖機構を解明する。 1)については、DCISに対して当施設で手術が行われた155検体の研究用免疫染色を行い、腫瘍の病理学的特徴を評価した。DCISにおいても、ホルモン受容体の発現の有無、HER2蛋白の過剰発現の有無によるサブタイプの多様性があることが確認された。それらの検体のうち、whole exome sequencingに適した検体を選択し、DNA抽出を行った上で解析を施行し、現在その結果の分析中となっている。 2)については、DCISの細胞株のモデルであるMCF10DCIS.comの入手、培養に成功し、Cas9の導入を行った。現在は、whole genome knockout screenの準備中である。 3)については、手術検体を用いたオルガノイドの樹立を開始した。まずはオルガノイド樹立・培養に必要な試薬・培養条件を決定するため、IDCの検体を用いたオルガノイド樹立を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2)のIn vitroでのDCISモデルを用いたCRISPR/Cas9 knockout screeningについては、Cas9の導入率が低く、ウイルス濃度をあげるなどの工夫が必要であったことや、細胞のコンタミネーションなどがあったため、遅れが生じ、実際のscreeningに必要な細胞数を得るのに時間が必要となっている。 3)のオルガノイドに関しては、腫瘍細胞量の極めて少ないDCISからオルガノイドを樹立するのは技術的に難易度が高く、まずは比較的腫瘍量の多いIDCからの樹立を試みているため、遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
1)の患者検体のクリニカルシークエンシングを用いたDCISとIDCの遺伝子変異・遺伝子発現の違いを明らかにするプロジェクトについては、現在ホルモン受容体陽性・HER2陰性のLuminal type、HER2蛋白の過剰発現を認めるHER2 type、ホルモン受容体陰性・HER2蛋白陰性のtriple negative typeについて、whole exome sequencingの結果の解析を行う。これらの結果と、既存のTCGAのデータとを比較することでDCISに特有な遺伝子変異・遺伝子発現の変化を同定できるか確認を進めていく。 2)のIn vitroでのDCISモデルを用いたCRISPR/Cas9 knockout screeningについては、MCF10DCIS.comの細胞株を用いて、倍加時間、細胞密度、最適なpolybrene濃度、抗生剤の濃度、感染率などを入念に確認しており、細胞株が本実験への適性があることは確認が出来ている。今後はCas9の導入、whole genome knockout screenの実行を予定している。 3)のオルガノイドについては、現在も乳癌細胞を用いた検体採取を1~2週に一度の頻度で定期的に行っている。樹立の手技が確立されたところでDCISのオルガノイド作成を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞株を用いた研究に遅れが生じたため、Cas9導入、スクリーニングに使用される試薬等の費用を次年度使用額として計画する。
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