研究課題/領域番号 |
22K08787
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
山田 岳史 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50307948)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Liquid biopsy / 抗EGFR抗体 / 大腸癌 |
研究実績の概要 |
本研究では、Liquid biopsyを用いて抗epidermal growth factor receptor (EGFR)抗体の耐性獲得メカニズムを解明することを目的とした。これまでの研究から、腫瘍組織の検査でRAS野生型と診断された患者の10%以上の症例の腫瘍内にRAS/BRAF変異クローンが存在している(空間的不均一性)ことを明らかにしており、この空間的不均一性は、治療効果に影響を及ぼすと考えていた。RAS/BRAF以外にも、PIK3CA変異、HER2の増幅、METの増幅、等の空間的不均一性があり、またRAS変異、BRAF変異、PIK3CA変異、HER2の増幅、METの増幅には時間的不均一性があるため、これらが治療効果に与える影響を検証した。研究開始前の仮説に反し、RAS変異、BRAF変異、PIK3CA変異の空間的不均一性は、奏効率という点では抗EGFR抗体の効果に影響を与えなかった。しかし、奏効期間には影響を与える可能性があり、現在、経過観察中である。 多くの症例で、RAS変異、BRAF変異、PIK3CA変異、HER2増幅の時間的不均一性が観察され、特に、HER2が治療開始直後から増幅する症例では、効果が得られないことが明らかとなった。またRAS変異、BRAF変異、PIK3CA変異は多くの症例で観察されたが、これらの変異は抗EGFR抗体投与終了後、約1年で消失し、これらの症例では、抗EGFR抗体が再度奏効することも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗EGFR抗体の投与によりRAS変異、BRAF変異、PIK3CA変異、およびHER2の増幅が生じることが確認できた。METの増幅についてはまだ確認できていない。 末梢血からSmall extracellular vesicles (S-EV)およびLarge extracellular vesicles (L-EV)を抽出することができた。S-EV単離キットを用いるとL-EVが混じることが明らかになったので、新たにマイクロ流路を作成し、S-EVのみを単離することに成功した。単離したS-EVを用いることで、circulating tumor DNA (ctDNA)を用いるよりも高感度にRAS等の変異を同定できることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、血液中の循環DNAと細胞外小胞(extracellular vesicles:EVs)を用いて行っている。細胞外小胞は100 nm程度のSmall EVsと400 nm程度、あるいはそれ以上の大きさを持つLarge EVsに分類される。市販のEVs単離キットを用いるとSmall EVsとLarge EVsが混じったものが採取される。独自に開発したマイクロ流路を用いることでSmall EVsのみを単離することに成功したため、純度の高いSmall EVsを用いた解析を進める。またLarge-EVsのみを単離する方法の開発を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外学会での発表費用を計上していたが、予定より少なくて済んだ。次年度は研究結果の最終報告を海外で行う予定であり、その予算に使用する予定である。
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