研究課題/領域番号 |
22K08790
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
野津 司 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30312367)
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研究分担者 |
奥村 利勝 旭川医科大学, 医学部, 教授 (60281903)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 術後イレウス / SGLT2阻害薬 / サイトカイン / TLR4 / グレリン |
研究実績の概要 |
腹部手術後のイレウスモデル(ラット)を使用して,その治療薬の検索を開始した.phlorizinは非選択的SGLT阻害作用を持つポリフェノールであり,LPS,サイトカインシグナルを抑制して,内臓知覚過敏,腸管バリアの傷害を改善させることが我々の研究で明らかになっている.そこで,これらのシグナルが関与すると考えられる腹部手術後イレウスモデルで,その効果の検討を行った.まずこのモデルの胃排出低下効果に,これらのシグナルが本当に関与するのか,TLR4拮抗薬,IL-1受容体拮抗薬を使用し実験を行い,胃排出が改善することを確認し,確かにこれらのシグナル依存性の反応であることがわかった.またラットにTLR4のリガンドのLPSを投与すると胃排出は低下し,これもTLR4拮抗薬,IL-1受容体拮抗薬で改善することを確認した.phlorizinの皮下投与は腹部手術後イレウスモデル,LPSモデル双方で,胃排出を改善させた.またこの作用はグレリン受容体拮抗薬で阻止されることが明らかとなった.一方,phlorizinの胃内投与では効果を示さなかった.消化管には主としてSGLT1が存在しSGLT2の発現は乏しい.このためphlorizinの胃内投与は,SGLT2の抑制は起きないと考えられる.これらの結果は,腹部手術後のイレウスモデルの胃排出遅延は,TLR4,IL-1シグナルを介する変化であり,phlorizinはこの変化を,SGLT2の抑制とグレリン受容体の刺激を介してブロックすることを示している.以上より,本研究はphlorizinの投与が,術後イレウスの治療薬として,有望な治療薬である可能性を指摘するものである.本研究は,現在論文として投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
テーマの一つについて明確な結果が得られ,論文投稿の段階まで進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
同様のアプローチで,術後イレウスに奏功する可能性がある,既存薬剤を検索していく.術後せん妄モデルについても,その確立を進めて,こちらに関しても治療薬の検索を進める.現在術後せん妄モデルは確立されていない.まずは脳血管関門の障害が起きる系を確立させ,神経炎症が起きるような系を確立していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
学内での教育,管理業務が新たに加わり,研究エフォートが下がったことが原因.本年度は管理業務が軽減されたので,研究エフォートの増加が期待できる.また,コロナ禍で学会参加がリモートで済み,旅費等がかからなかった事も理由.不必要な支出は今後も控えて,研究を推進していく.
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