研究課題/領域番号 |
22K08802
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
山本 学 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (40720024)
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研究分担者 |
原 和志 鳥取大学, 医学部附属病院, 医員 (10812886) [辞退]
堀越 洋輔 鳥取大学, 医学部, 講師 (60448678)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 膵癌 / Tyro3 / オートファジー / チロシンキナーゼ受容体 / 薬剤治療抵抗性 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は「Tyro3によるオートファジーを介した薬剤治療抵抗性の分子病態を明らかにし、臨床応用に繋がる膵癌の新規治療薬開発の基盤を確立すること」である。 膵癌は代表的な難治癌の1つであり、極めて予後不良である。その一因として化学療法や免疫チェックポイント阻害薬への治療抵抗性を示すことが挙げられる。 本研究に先立ち、申請者はチロシンキナーゼ受容体であるTyro3がタンパク分解の一型であるオートファジーを制御することで、これらの薬剤治療抵抗性を惹起する可能性を見出している。チロシンキナーゼ受容体を標的とした治療は多くの癌腫で臨床応用され有望な治療成績を収めているため、上述した分子機構が明らかになれば、Tyro3が膵癌に対する新たな治療標的分子となる可能性がある。 令和5年度はTyro3が薬剤治療(化学療法およびICI)抵抗性を獲得する機構とオートファジーとの関連について検討を行った。 まず予備実験でTyro3を過剰発現させた膵癌細胞で細胞表面に存在するMHC-classⅠ分子の発現の増加が共焦点顕微鏡で確認できていたため、Westerb blottingで定量化を試みたが、Tyro3過剰発現、あるいはSiRNAを用いたTyro3発現抑制いずれにおいてもMHC-classⅠ分子の一定した増減は認めなかった。MHC-classⅠは細胞表面に存在するため、膜分画を抽出し、同様にWesterb blottingを行ったが、有意な変化を認めなかった。 Tyro3とオートファジーの関連についてはTyro3を発現操作することでLC3のmRNAレベルが変化する可能性を見出しており、Tyro3によるオートファジー制御機構が存在する可能性があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の該当年度における実験計画は、(1)Tyro3とMHC-Ⅰ発現解析、(2)Tyro3とオートファジーの解析を行うことであった。(1)については前述のとおり、Westerb blottingでの定量を試みたが、Tyro3と関連するMHC-classⅠの変化は認めなかった。MHC-classⅠの存在する膜分画を抽出し同様に検討してみたが、やはり関連は認めなかった。(2)についてはWesterb blottingでTyro3とオートファジー関連タンパクとの間に有意な相関は認めなかったが、リアルタイムPCRでTyro3とLC3との相関を認めたため、こちらに関してさらに解析を続けていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Tyro3とMHC-classⅠ分子を介したICI治療抵抗性については想定していた基礎実験でのデータが得られず、方針を変更する必要がある。まずは基礎実験で結果の得られているTyro3と化学療法抵抗性やオートファジーの関連について優先的に実験を進めていく。 実験の計画は以下の通りである。
(1)Tyro3を過剰発現・発現抑制し、形成されるオートファゴソーム数の変化を共焦点顕微鏡にて観察する。 (2)膵癌の臨床検体におけるTyro3の免疫染色はすでに終了している。LC3についても同様の検体で免疫染色を行い、Tyro3とLC3の発現の相関を確認する。 (3)Tyro3過剰発現/発現抑制細胞をヌードマウスに皮下注射し生着させる。Gemや5-FUの腹腔内投与を開始し、Tyro3の発現による化学療法の感受性の差異を検討する。併せてGem,5-FUに加えてCQの腹腔内投与を行い、CQの化学療法に対する感受性の差異を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度は主に細胞実験を行い、経費を消耗品の購入に充てる予定であったが、自施設にあるものを用いたため未使用額が生じた。未使用額は来年度、消耗品購入や動物実験の経費に充てることとしたい。
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