研究課題/領域番号 |
22K08818
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
播本 憲史 群馬大学, 医学部附属病院, 准教授 (00419582)
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研究分担者 |
三森 功士 九州大学, 大学病院, 教授 (50322748)
横堀 武彦 群馬大学, 未来先端研究機構, 准教授 (60420098)
調 憲 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70264025)
伊古田 勇人 群馬大学, 医学部附属病院, 准教授 (90420116)
川端 麗香 群馬大学, 未来先端研究機構, 講師 (90721928) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 分化 / 肝内胆管癌 |
研究実績の概要 |
肝細胞癌切除症例の内、形態的な違いを持ちかつ、分化度が異なるcomponentを持つ切片を19症例、混合型肝癌4症例を病理学伊古田先生とともにピックアップした。ホルマリン固定であるため、このうちRNAのクオリティが十分高いことを検証し、肝細胞癌切除4症例、混合型肝癌4症例の網羅的空間的遺伝子解析を行った。このうちvisiumによる遺伝子発現が著明な肝細胞癌切除3症例、混合型肝癌3症例の病理学的表現型の差(分化度の差)と遺伝子発現の差を網羅的な解析してた。有望な遺伝子を同定しつつある。特に増殖活性の高い部位と脂質代謝にかかわる遺伝子の発現の差が著明であり、予測されるT細胞浸潤のサイクリングに従って、ホットな領域とコールドな領域に分けたところ、HCC領域の代謝がCCC領域の代謝とは異なっていることがはっきりわかった。特に遺伝子Xは、免疫細胞浸潤が豊富な領域 (hot tumor)で高発現し、遺伝子Yは、免疫細胞が乏しいcold tumor領域で高発現していた。HCC切除サンプルでタンパクXの発現と免疫細胞の関係をIHCにて検討したところ、visiumの結果の通り、タンパクXの発現が高く同部位のCD8の浸潤が多く、タンパクBの発現が少ない症例では免疫細胞の浸潤も少ないことが判明した。またTCGAデータからHCCにおいて遺伝子Xが高発現していると予後不良であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホルマリン固定のサンプルからRNAクオリティの良いものを描出し実際の空間的遺伝子解析を合計6検体で行うことができた。まず、免疫反応が豊富な領域とそれ以外の領域に分け、HCCとCCCそれぞれで発現の差がある遺伝子を描出した。 予測されるT細胞浸潤のサイクリングに従って、ホットな領域とコールドな領域に分けたところ、HCC領域の代謝がCCC領域の代謝とは異なっていることがはっきりわかった。 特に遺伝子Xは、免疫細胞浸潤が豊富な領域 (hot tumor)で高発現し、遺伝子Yは、免疫細胞が乏しいcold tumor領域で高発現していた。 HCC切除サンプルでタンパクXの発現と免疫細胞の関係をIHCにて検討したところ、visiumの結果の通り、タンパクXの発現が高く同部位のCD8の浸潤が多く、タンパクBの発現が少ない症例では免疫細胞の浸潤も少ないことが判明した。 さらにTCGAデータからHCCにおいて遺伝子Xが高発現していると予後不良であった。 以上のことが示され今年度の検討結果からは、visumで同定された遺伝子XはHCCとCCCの両者でcold tumorの形成に寄与することが明らかとなった。HCCもCCCもcombined HCCのすべてをhot tumor化する治療標的として有望、つまりICIとの併用も有望である可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であり、invivoの検討は難しいとかんがえる。このため、 遺伝子Xは脂質代謝に関連する酵素であるため、脂質関連のメタボロームを行い、遺伝子Xのタンパクレベルで脂質関連酵素PGEsの発現と免疫細胞(CD3,4,8,CD163)の関連と発現クラスタリングを行う。CD8 (FASTREDII)とGPX2 (DAB)の2重染色で関連評価 (HCCとCCCとcombinedHCC)遺伝子Xの高発現領域で特徴的なtumor microenvironment関連分子の変動をリスト化する。 HCC臨床検体10例における遺伝子X高発現部と低発現部のmicrodissectionを行い遺伝子変異解析を行う。さらにGDC/ICGC data portalやSRAに登録されている肝癌・肝内胆管癌のRNA-seqあるいはscRNAseqデータ、変異データ、臨床情報を入手し、候補因子の発現と分化度や予後との関連解析を行う。 以上により、遺伝子Xの免疫との関連を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は網羅的遺伝子発現の解析に時間を要した。今年度は遺伝子Xや遺伝子Yのタンパクでの発現、免疫細胞の免染を行ったが、研究室内にある既存の抗体や試薬でまかなうことが可能であったため、研究費が予定よりも残金が出た。このため、次年度はリピドミクス(脂質代謝関連)を行い、免疫と関連のある有望な遺伝子をピックアップし。腫瘍の微小環境にかかわる個別の遺伝子について詳細に検討する予定であるため、研究費が増える予定である。
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