研究課題/領域番号 |
22K08824
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 伸弥 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50912010)
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研究分担者 |
藤野 志季 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (10768956)
三吉 範克 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20528624)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | がん関連線維芽細胞 / 大腸癌 |
研究実績の概要 |
がんは個々の患者間で多様性を持つ集団である。その多様性を構成する要素の一つが「がんの間質形成」である。間質とは、免疫細胞、血管、線維芽細胞などを含むがん細胞周囲の組織である。大腸癌ではがん細胞が増殖する際に間質反応(Desmoplastic reaction)が見られ、間質の特徴が個々の患者の予後に関連することが指摘されている。特にがん周囲の線維芽細胞(がん関連線維芽細胞)が、がんの浸潤や転移、薬剤の抵抗性を助けると考えられており、間質をターゲットにした治療の開発が期待される。 我々は患者由来2次元大腸癌オルガノイド(2DO)のマウスへの皮下移植モデルを用いて間質細胞を分離・抽出し機能解析を行うほか、シングルセル解析を用いて網羅的に遺伝子発現解析を行い、大腸癌のがん関連線維芽細胞における治療標的分子を同定しようと計画した。 まず、2DOをマウスへ皮下移植することで、移植組織にがん細胞と間質の再現が可能であることを確認した。次に2DOにレンチウイルスベクターを使用して、赤色蛍光色素タンパクであるDsRed遺伝子を導入し恒常的に発現させた。マウス皮下へ異種移植を行ったのち、摘出した腫瘍細胞からFACSにてがん細胞および血球系細胞を除外し、がん関連線維芽細胞を含むと考えられるマウス間質細胞(mSC)を分離した。また、mSCと癌細胞の共培養を行ったところ、癌細胞の増殖が促進された。また、mSCに癌細胞の上清を加えた間接共培養実験では癌細胞の増殖が促進された。さらに、mSCと癌細胞を共培養したうえで、抗がん剤への感受性を調べたところ、mSCを加えると癌細胞の薬剤抵抗性が増加することが確認できた。 現在、大腸癌における新規がん関連線維芽細胞マーカーを同定する目的で、異種移植腫瘍をシングルセル解析へ提出しており、近日解析予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は患者由来2次元大腸癌オルガノイド(2DO)のマウスへの皮下移植モデルを用いて間質細胞を分離・抽出し機能解析を行うほか、シングルセル解析を用いて網羅的に遺伝子発現解析を行い、大腸癌のがん関連線維芽細胞における治療標的分子を同定しようと計画した。当初の予定通り、患者由来大腸癌2次元オルガノイドを用いて、がん関連線維芽細胞を含むマウスの間質細胞を分離することができたほか、移植腫瘍由来のマウスの間質細胞が癌細胞の増殖や抗がん剤への薬剤耐性を増強することが確認できた。さらに、移植腫瘍をシングルセルRNAシークエンス解析へ提出し、細胞ごとの網羅的な遺伝子発現の結果が返ってきており、現在解析している途中であり、研究の進捗は概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
大腸癌オルガノイドのマウス皮下移植腫瘍をシングルセルRNAシークエンス解析へ提出しており、癌細胞と間質細胞における網羅的な遺伝子発現を解析予定である。解析結果から治療標的分子となりうるマーカーを同定する。癌関連線維芽細胞を含む間質細胞に対して治療標的分子の機能解析を進める。また、標的分子に対する阻害薬を投与し、間質細胞の増殖が阻害されるか、癌細胞との共培養で癌細胞の増殖が阻害されるかを検証する。治療標的分子に対する阻害薬が生体内でも有用かを動物実験で検証する。その後、治療標的分子のシグナル伝達などの詳細な機構についても明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析に必要な機材とソフトウェア等の新規設備を導入し使用する予定であったが、研究施設に設置されている機材およびソフトウェアで代用可能であることが判明したため、一時的に使用額が少なくなり、次年度使用額が生じた。次年度に当初より追加でシングルセルRNAシークエンス解析等へ検体を提出する予定があり、同費用等に充当する予定としている。
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