研究課題/領域番号 |
22K08825
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
徳安 成郎 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (40620919)
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研究分担者 |
花木 武彦 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (30788592)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Chitin / Hepatectomy / Bile leakage / Hepatic stellate cell / TGF-β/Smad pathway |
研究実績の概要 |
術中に肉眼的に検出できない微細な胆汁漏出には、本研究開始時点も手術中に行える有効な対応法がなく、結果一定の頻度で肝切除後の胆汁漏が合併症として生じています。肝切除術に伴う胆汁漏の発生頻度は、本邦のNational Clinical Database Feedback によると7.66%(2013-2017 年全国集計)とされ、胆汁漏は稀な合併症ではありません。漏出した胆汁に感染が合併すると重篤な感染症へと発展するため、その発生を減少させることは、肝臓外科医にとって解決すべき非常に大きな命題です。しかし、肝離断面に対してこれまで行ってきた縫合処置などの「点」での対応には限界があるため、術中には顕在化していない胆汁漏出、出血に対して「面」での対応が可能な生体被覆・接着剤の開発が医学会で強く求められています。 令和5年度(2023年度)の研究では、マウス線維芽細胞株(NIH 3T3)とヒト星細胞株(TWNT-1)に対するキチンの作用を検証しました。両細胞株ともキチン刺激下に細胞増殖、遊走、浸潤能が亢進し、コラーゲン産生が亢進されること、そしてこれらの変化には、TGF-β/Smad系の活性化が随伴することを確認しています。 本研究課題は、「キチンを肝離断面に使用することで、TGF-β/Smad系を介した線維化が、肝離断後の胆汁漏予防に寄与する」かを明らかにすることを目的としています。キチンが線維化の主体である肝星細胞の活性化を惹起し、肝離断面における、「面」での変化として炎症・治癒機転を促進するかを、令和6年度(2024年度)も引き続き検証します。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度(2023年度)までに実施した本研究課題により明らかになったことを以下に示します。 ①マウス線維芽細胞株(NIH 3T3)に対するキチン刺激下の結果、細胞増殖、遊走、浸潤能が亢進し、コラーゲン産生が亢進されることが分かりました。また、この変化には、TGF-β/Smad系の活性化が伴っていることが示されました。 ②ヒト星細胞株(TWNT-1)に対するキチン刺激の結果、マウス線維芽細胞同様にTGF-β/Smad系の活性化を伴ったコラーゲン産生の亢進と、細胞増殖、浸潤能の亢進が確認されました。 また、上記①、②の変化は、TGF-βのリン酸化活性を阻害する実験により、有意に抑制されることから、キチン刺激による線維化促進作用にTGF-β/Smad系が関わっていることが、当初の計画のとおり示すことができました。一方で、キチンそのものの肝細胞に対する毒性の有無と、上記細胞における形質の変化については、一部評価できていない部分が課題として残っているため、次年度(2024年度、令和6年度)以降にもこれらの検討を行う予定としています。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度(2023年度)までの検証の結果、キチン刺激によるマウス線維芽細胞(NIH-3T3)とヒト星細胞(TWNT-1)におけるTGF-β/Smad経路を介した活性化作用が、示されつつあります。令和6年度(2024年度)以降、これらの検証を続けるとともに、今後はヒト線維芽細胞でも同様の結果が得られるかも合わせて検証する予定です。また、胆汁漏モデル動物を作成し、キチンによる胆汁漏予防効果の検証を計画しています。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4-5年度(2022-2023年度)のCovid-19の流行により、研究が一時的に中断した時期があったために計画に遅延が生じています。使用計画:一時的な研究中断はあったものの、概ね順調に進んでいるので令和6年度(2023年度)以降に適宜執行します。
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