研究課題
まず免疫組織染色によりヒト胃癌組織におけるSLCO2A1蛋白発現を確認することができた。一方、ヒト食道扁平上皮癌組織ではSLCO2A1蛋白発現を確認することはできなかった。ヒト胃癌細胞株におけるSLCO2A1発現をウエスタンブロット法で確認したところ、MKN7、MKN45、MKN74、NUGC4、HGC27細胞株におけるSLCO2A1蛋白発現を認めた。同様にヒト食道扁平上皮癌細胞株(TE8、KYSE70、KYSE790など)においてもSLCO2A1発現が確認できた。SLCO2A1高発現胃癌細胞株(MKN7、MKN45)にSLCO2A1-siRNAをトランスフェクションし、SLCO2A1発現を制御して機能解析を行ったところ、細胞増殖能の低下、細胞周期の停止、アポトーシスの増強を認めた。SLCO2A1高発現株であるMKN45において、低浸透圧刺激時の調節性容積減少(RVD)を含む経時的細胞容積変化を確認した。また、MKN45において低浸透圧刺激によりパクリタキセル(PTX)の細胞内取り込みが亢進すること、Cl-輸送阻害薬であるNPPBを使用するとRVD抑制とともに細胞内PTX取り込みが増強されることを確認した。一方、SLCO2A1発現株であるMKN74、NUGC4において、非浸透圧刺激時ではあるものの、NPPB使用により細胞内PTX取り込みが増強されることを確認した。SLCO2A1高発現株であるMKN45において、Maxi-Cl阻害薬であるGd3+を用いて低浸透圧刺激時の細胞容積変化を解析したが、Gd3+併用によるRVD抑制効果は確認できなかった。現在、SLCO2A1発現を調節した際の低浸透圧刺激下での細胞内PTX取り込み・細胞容積変化についての解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画のとおり、ヒト胃癌組織・細胞株におけるSLCO2A1発現の確認とSLCO2A1発現レベル調節に基づく細胞機能解析が進んでいる。低浸透圧刺激による細胞容積変化やPTX取り込みの変化の解析も開始できている。すでに、次年度に計画していた研究も進行中であり、研究計画は順調に進展していると考えている。
本研究の根幹にかかわるヒト胃癌組織・細胞株におけるSLCO2A1発現を確認できているため、大きく方針を転換することなく当初の研究計画に従い実験を進めていく。SLCO2A1発現レベル調節に基づく細胞機能解析も順調に進んでおり、今後はSLCO2A1発現を制御した際の遺伝子発現変化の網羅的解析を進め、特記すべき重要な遺伝子変化やpathwayについては適宜validationを行っていく。また、SLCO2A1発現を調節した際の低浸透圧刺激下での細胞内PTX取り込み・細胞容積変化についての解析も進めていく。
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