研究実績の概要 |
KLF5 (Kruppel-like factor 5) は消化器腺癌や扁平上皮癌といった特定の癌種でのみ発現が亢進している転写因子であり、大腸癌においては発癌に重要な癌幹細胞マーカーとしての報告もあり、治療標的として有望である。本研究では、KLF5を基軸とした新たな癌関連分子制御メカニズムを明らかにし、新規治療法の開発につなげることを目指す。初年度の研究では、in silico解析の結果からKLF5の新たな標的遺伝子と考えられる候補のうち、これまで教室で研究してきたMUC1およびPD-L1遺伝子に着目し、KLF5が両遺伝子の発現調節にどのように関わっているかについて検討を行った。その結果、siRNAによるKLF5ノックダウンによって、MUC1, PD-L1発現はいずれも低下し、プロモーターアッセイの結果、MUC1, PD-L1のプロモーター活性はKLF5阻害剤の投与によって、有意に抑制された。今年度はChromatin immunoprecipitation (ChIP) 実験を行い、KLF5タンパクが実際にMUC1, PD-L1プロモーター領域に結合していることを明らかにできた。MUC1プロモーターに相当するフルサイズ [-1000~転写開始点~+200] のレポータープラスミドを作成したがMUC1の転写活性化は得られず、[-1000~転写開始点~+30] の領域を含んだレポーターを作成したところ強い転写活性が得られた。この領域を短縮化した複数のレポーター(-1000を-620, -590, -530, -500, -415, -265, -115に短縮)を作成して転写結合部位の同定を試みていたが、米国の研究グループより同様の実験によって、-539~-533が重要との報告があったため、この実験はここまでに留めた。
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