研究課題
肝細胞癌 (HCC) は術後の再発率が高いために予後不良であり、新たな治療法の開発が求められている。再発の予防は、患者QOLを改善するだけでなく、生存期間の延長も期待される。本研究は、予後不良なHCCを対象として、転移の原因となる癌幹細胞 (CSC) を解析し、肝内転移による術後再発の抑制に結びつける。我々は、CSCとしての顕著な表現型 (高い転移能及び抗癌剤耐性、加えて免疫監視逃避能) を示す癌幹細胞様浮遊細胞塊 (Cancer stem-like sphere cells, CSLCs) を独自誘導し、分泌に関わるRAB3B等の特異的遺伝子を同定しており、本研究により術後肝内転移抑制のコンセプトを確立する。特にCSLCによる細胞間コミュニケーションを明らかとする。これまでの解析から、肝癌CSLCを肝癌細胞株SKHEP1およびHLEより誘導し、それぞれNK細胞からの免疫逃避能を有することを明らかとした。両CSLCに共通してエクソソーム分泌の亢進が寄与していると示唆された。また、SKHEP1からのCSLCにおいてはRAB3Bがエクソソーム放出に重要であることを明らかとし、興味深いことに胃癌や食道癌細胞から誘導した抗癌剤耐性能亢進を示すCSLCにおいてもRAB3BやRAB4Bの発現亢進を認めた。一方で、RAB4Bはノックダウンすることでエクソソーム量が増えることが報告されている。前述の胃癌や食道癌細胞においてRAB4Bノックダウンによりエクソソーム量の増加を認めたが、抗癌剤耐性は減弱していた。また、胆道がんゲムシタビン耐性株からのエクソソームは他の細胞株の抗がん剤耐性を引き起こすことが観察され、そのエクソソーム内の特定のmicroRNAがエクソソーム分泌を促進し抗がん剤耐性をもたらすことを見出した。肝癌細胞株から誘導したCSLCからのエクソソーム内にも胆道がんゲムシタビン耐性株エクソソームと同じファミリーに属するmicroRNAが豊富であることを認めた。
2: おおむね順調に進展している
CSLC表現型に寄与する特定のexosomal microRNAファミリーを見出すに至った。
CSLCエクソソームに特異的と示唆された特定のmicroRNAファミリーについて解析を進める。
教室共有の在庫試薬を用いることで支出が抑えられた。miRNA解析費用に充てる。
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