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2023 年度 実施状況報告書

スキルス増殖特異活性化シグナルを標的とした胃癌標的治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K08859
研究機関金沢医科大学

研究代表者

安本 和生  金沢医科大学, 医学部, 教授 (90262592)

研究分担者 石垣 靖人  金沢医科大学, 総合医学研究所, 教授 (20232275)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードがん性腹水 / MET増幅胃癌 / in vivo selection / EGFR遺伝子増幅胃癌
研究実績の概要

スキルス胃癌は高頻度に悪性腹水を合併する。そのメカニズムの詳細は不明である。
そこで、MET遺伝子増幅のある親株とin vivo selectionにより得られた悪性腹水形成能を獲得した子株(58AS1/AS9)の2つの細胞株を用いて、親株との分子生物学的差違を検討し、悪性腹水形成に関わる因子の同定を図ることとした。
興味深いことに、腹水形成能を獲得した株では、MET増幅細胞であるにもかかわらずウエスタンブロットならびに細胞上清中に新たにHGF蛋白産生が明らかとなった。また親株で、MET遺伝子増幅とともにEGFR遺伝子増幅もまた同時に発現していることが確認されたが、腹水形成能をもつようになったAS1/AS9では、EGFR遺伝子増幅は抑制され、EGFRリガンドであるamphiregulinにより一定の増殖亢進作用が誘導されることが確認できた。
上記の検討結果から、MET遺伝子増幅を有する細胞株で腹水形成能を獲得するには、新たなHGF蛋白の産生誘導を通して血管内皮細胞上のMET活性化が必須ではないかと考えられた。また、EGFRリガンドによる増殖能亢進反応の出現は、HGFによるがん細胞からのオートクリンEGFRリガンドamphiregulinの産生増強からオートクリン機構で惹起されるがん細胞増殖機構の成立が想定された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

スキルス胃癌の悪性腹水合併がん性腹膜炎病態形成のメカニズム解明研究は、MET増幅細胞のin vivo selectionによる細胞株を用いた検討により予定通り進んでいる。がん性腹膜炎病態の中で、とくに悪性腹水の制御は、患者の予後・QOL改善において非常に重要な課題であるため。腹水抑制により、再び断念せざるを得なかった薬物治療再開の可能性をもたらしうる大変重要な研究成果となる。

今後の研究の推進方策

胃がん性腹膜炎病態に高頻度に合併し、患者の予後を最も左右する腹水制御は解決すべき喫緊の重要課題であるため、本研究は腹水産生抑制の分子基盤の解明に重点を置く。がん性腹水制御はアンメットニーズな領域で、標準的で効果的な治療法は存在しない。腹水貯留後の平均予後は、胃癌では数ヶ月と大変短い。
腹水形成抑制メカニズム解明を通して、非常に短期間の予後をたとえ半年単位でも延長することができれば、患者の真のQOL改善が得られ、その意義は大きい。
腹水という測定不能病変であるため臨床試験に組み入れにくいという実状から多くの臨床試験は本患者対象群にはスキップされてきた。
本研究を通して、新たな分子を介する機序解明から、腹水貯留胃癌を対象とした積極的な臨床試験実施へとつなげ、標準治療確立へと進めたい。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由として、腹水形成能獲得株と親株との詳細な比較から、いくつかの重要な分子を同定できたが、新たな知見を使用して十分な研究成果を得る方法について検討し、いくつかの方法を模索する必要が生じたため。
今後の使用計画としては、ウエスタンブロット法やin vivo試験を通して、真の生物学的活性の有無を検証する。そのため、各種抗体購入や各種投与薬剤を用いたvivoの検討のため多くのヌードマウス購入を予定している。さらにNGS法を用いた検討でも別の角度から解析を同時並行で実施する予定にしており、研究資金は十分とは言えない状況である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] がん性腹膜炎高頻度発症スキルス胃癌におけるMET/VEGFRシグナル経路の本質的関与2023

    • 著者名/発表者名
      安本 和生
    • 学会等名
      日本がん転移学会学術集会・総会
  • [学会発表] Dual blockade of MET and VEGFR2 signaling pathways effectively controls peritoneal carcinomatosis with massive ascites in diffuse gastric cancer2023

    • 著者名/発表者名
      安本和生、葛西 傑、桑山直美、松本邦夫、川島篤弘、松島綱治
    • 学会等名
      IGCC(国際胃癌学会)
    • 国際学会
  • [学会発表] Driver Gene-Independent Essential Features and Regulation of Malignant Ascites Production in Scirrhous Gastric Carcinoma2023

    • 著者名/発表者名
      安本和生、葛西 傑、川島篤弘、松本邦夫
    • 学会等名
      日本癌学会学術総会

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公開日: 2024-12-25  

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