研究課題/領域番号 |
22K08861
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
小笠原 宏一 弘前大学, 医学研究科, 客員研究員 (00836744)
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研究分担者 |
袴田 健一 弘前大学, 医学研究科, 教授 (30271802)
木村 憲央 弘前大学, 医学研究科, 講師 (60436029)
吉澤 忠司 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (70761071)
鬼島 宏 弘前大学, 医学研究科, 教授 (90204859)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 遠位胆管癌 / 組織透明化法 / 神経周囲浸潤 / 神経新生 |
研究実績の概要 |
本研究では、「遠位胆管癌の神経周囲浸潤病巣における浸潤能の獲得やその形態的変化は、癌としての悪性度に関わる変化と結びついている」という仮説から、遠位胆管癌のうち予後良好である症例群と予後不良となる症例群において、その浸潤形態やメカニズムが異なることを証明することが研究目標である。 遠位胆管癌の悪性度獲得にかかわる因子の検討として、本研究では(ア) 遠位胆管癌の神経周囲浸潤の定量化、(イ) 遠位胆管癌の神経栄養因子の発現強度の定量化、(ウ) 組織透明化法による遠位胆管癌の癌浸潤部の観察の3つの観点からアプローチする計画である。上記のうち2023年度は主に(ア) 遠位胆管癌の神経周囲浸潤の定量化および(イ) 遠位胆管癌の神経栄養因子の発現強度の定量化の2点に重点をおいた。 (ア)遠位胆管癌の神経周囲浸潤の定量化では2010-2015年にかけて当施設で手術治療を実施した遠位胆管癌の症例を対象として病理組織標本を再評価し、(1)神経周囲浸潤の個数の集計、(2)胆管壁内外での神経周囲浸潤の集計、(3)神経周囲浸潤の形態別集計(Grade1: 神経の一部に浸潤、Grade2: 神経の全周性に浸潤、Grade3: 神経束内部まで浸潤)を行う。これら3形式の集計結果から統計学的に予後不良となる浸潤形態を解析した。 (イ)遠位胆管癌の神経栄養因子の発現強度の定量化に関しては、上記(ア)の検討で予後不良の特徴を有する群とそれ以外の群間において、神経栄養因子発現の相関関係を検討する。評価方法は上記(ア)の検討において抽出した2切片に対し各神経栄養因子の免疫染色を実施し、IHC法による染色強度を判定する。この結果から予後不良群とそれ以外の群間において統計学的に発現強度に有意差が認められるかを解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度および2023年度の研究計画については、おおむね予定通り滞りなく実施することができている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はこれまでに実施した研究項目である(ア) 遠位胆管癌の神経周囲浸潤の定量化、(イ) 遠位胆管癌の神経栄養因子の発現強度の定量化、(ウ) 組織透明化法による遠位胆管癌の癌浸潤部の観察の3つの観点を横断的に検討し、予後不良となる神経周囲浸潤症例の観察をすることで、生体内でどのような浸潤メカニズムが生じているのかを解明し、どのような機序で悪性度を獲得するのかを検討する予定である。 これまでの研究のうち上記(ア)の検討では神経束内に癌組織が深く浸潤するGrade3: 神経束内部まで浸潤の特徴を有する症例が有意に予後不良であることが明らかとなった。さらに(イ)の検討において、Grade3: 神経束内部まで浸潤の特徴を有する症例において神経栄養因子の発現強度が有意に増強することが明らかとなっている。(ウ)の検討において、Grade3: 神経束内部まで浸潤の特徴を有する症例では、癌周囲の組織で有意に神経組織体積が増加していることが明らかとなった。これらの結果についてはこれまでに関係学会で発表済みである。 上記(ア)、(イ)、(ウ)の結果を横断的、統計学的に解析、検討することで遠位胆管癌の浸潤メカニズムを生じる過程について明らかにする計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はおおむね順調に進展している。しかし当初の研究計画とは、研究項目の重点遂行内容を一部変更したために、次年度使用額が生じることとなった。具体的には組織透明化法に関わる解析を重点的に優先して実施したため、遠位胆管癌の神経栄養因子の発現強度の定量化に関する研究、解析に係る経費が限られていた。 当初の研究計画にある遠位胆管癌の神経栄養因子の発現強度の定量化に関しては、予定よりも多くの症例を対象とした追加解析のために次年度使用額を2024年前半に使用予定である。引き続き、本来の2024年度経費も不可欠であり、こちらも年度内に使用予定である。
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