研究課題/領域番号 |
22K08870
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野田 剛広 大阪大学, 医学部附属病院, 講師 (50528594)
|
研究分担者 |
小林 省吾 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (30452436)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 肝細胞癌 / マクロファージ / 腫瘍血管内皮細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、肝細胞癌において腫瘍関連マクロファージを中心とした腫瘍血管内皮細胞や免疫細胞との分子メカニズムの解明、および腫瘍関連マクロファージの機能解析を行うことにより、肝細胞癌に対する新規治療標的の同定を行うことである。 当該年度においては、蛍光組織免疫染色による腫瘍関連マクロファージ(TAM)の解析、およびマウス骨髄細胞からのマクロファージへの分化実験を実施した。肝細胞癌切除検体(n=73)を使用し、CD163およびCD31の2重蛍光組織免疫染色により、腫瘍関連マクロファージ及び腫瘍血管の評価を行った。73例の内訳は、年齢の中央値は69歳、9例がHBV肝癌、39例がHCV肝癌であった。平均腫瘍径は3.1cm、単発55例、多発18例であった。肝硬変は32例に認めた。癌部における拡張した腫瘍血管数と間質の腫瘍関連マクロファージ数は有意に相関しており、CD163とCD31がhigh/highの群(n=25)は、無再発生存および全生存期間ともに有意に予後不良であった(5-year 全生存期間:31% vs 81%, p<0.001)。また単変量・多変量解析により、CD163 high/CD31 highは独立した予後不良因子であった。次に、マウスより骨髄細胞を採取し、M-CSF含有培地にて培養したところ、CD11b陽性、F4/80陽性のM0マクロファージへの分化を認めた。 研究の進捗としては、おおむね順調に推移している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究実施計画においては、①蛍光組織免疫染色による腫瘍関連マクロファージ(TAM)の解析、②腫瘍関連マクロファージ、正常血管内皮細胞、腫瘍血管内皮細胞の単離・培養を行う予定であった。1と2ともに終了し、切除検体による腫瘍血管内皮細胞と腫瘍関連マクロファージの解析は終了している。予想通り、腫瘍関連マクロファージ数と腫瘍血管内皮細胞数との間に相関をみとめた。さらに、切除検体による予後解析において、無再発生存期間および全生存期間の予後因子であった。無再発生存期間は、腫瘍の悪性度を反映したものと考えられるが、腫瘍血管数と腫瘍関連マクロファージ数がともに高値である、症例は腫瘍の悪性度が高く再発率が高率であった。腫瘍関連マクロファージによる、免疫抑制の機序などが推測される。 全生存期間においても独立した予後因子であり、この点については肝機能などの影響も考えられるが、患者自身の免疫能への影響の結果とも推測される。今後は、マウスにおいてマクロファージへの分化誘導実験によって、上記の結果の裏付けを行っていく予定である。腫瘍血管内皮細胞および正常血管内皮細胞の分離培養も完了しており、よって研究の進捗としては予定通りに進んでいると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、これまでの研究成果を踏まえてさらに研究を深化させる予定である。腫瘍関連マクロファージの機能解析を進めていく。腫瘍関連マクロファージ培養上清中のIL-10, VEGF,TGF-βをELISAにて検討し、培養上清による腫瘍血管内皮細胞の増殖能、管腔形成能、単層透過性試験を行う。培養上清によるT細胞への相互作用として、FACSによるPD-1、Tim3、LAG-3等の発現を検討する。また腫瘍関連マクロファージと腫瘍血管内皮細胞を混合し、マウス皮下腫瘍モデルにおいて腫瘍形成能を検討する。得られた腫瘍からCD8+T細胞等を分離培養し、ELISPOTによるIFN-γの産生能を検討する。次世代シークエンスにおる遺伝子発現解析により、腫瘍関連マクロファージにおいて発現変化の大きい遺伝子群を同定する。 その都度得られた研究結果により、適宜方法等の修正を行っていく方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度に研究の一部を実施予定のため
|